抄録
本稿はU. ベックのコスモポリタニズム論の独自性がどこにあり、コスモポリタニズムを論じるにあたりなぜコスモポリタン化の語を造る必要が彼にはあったのかをベック理論内在的に探ることを目的とする。本稿でいうベックのコスモポリタニズム論とは、彼が述べるところの(狭義の)コスモポリタニズム、コスモポリタン化および方法的コスモポリタニズムを含む理論を指す。コスモポリタン化という造語が主として事実を分析する概念でありながら、部分的に理想を実現する方途としても機能している点に彼のコスモポリタニズム論の独自性があると本稿は考える。それは彼の再帰的近代化論の論理的帰結でもある。この理論によれば、第二の近代において社会は目的―手段図式によって変革されるよりも、むしろ副次的帰結として変容していく。とすれば、副次的帰結を考量しつつ、世界がコスモポリタン化しつつあるさまを記述することが、彼にとってコスモポリタニズムへと舵取りするためのもっとも有効な戦略だったのではないか。コスモポリタン化の概念を用いて社会の発展の方向を分析する行為は、彼にとって理論的営為でもあり実践でもあったのではないか。この意味においてコスモポリタン化は彼のコスモポリタニズム論にとって必要不可欠な概念であり、この点に彼のコスモポリタニズム論の独自性があるといえよう。