抄録
本稿では国連などの国際機関を中心に広まった「持続可能な開発」あるいは「持続可能な社会」という考え方と、日本の環境社会学のなかで提唱された「生活環境主義」とを、方法論レベルにおいて比較することを通じて、現在の環境をめぐる考え方の整理をおこなった。その結果、当該地域の生活保全が環境を保護するうえでもっとも大切であると判断する生活環境主義の立場に立つと、「持続可能な開発」という考え方は、「自然環境主義」や「近代技術主義」と同様に、方法論の水準において批判の対象となることが示された。しかし一方で、地域社会に暮らす人びとの環境に向けられた行為が「持続可能な開発」という考え方に適合的な場合がしばしば観察され、生活環境主義の生活把握によってもそのことが確認されることがある。こうしたことが起こるのは、両論の方法論レベルを超えて、「環境と自分の暮らしとは究極のところでつながっており、暮らしを維持・発展させていくためには環境もまた守らなくてはならない」という思い(あるいは希い)を、地域の人々が実際に持っていることが多いためであると考えられる。