抄録
今日の社会理論にとってアイデンティティの概念は重要なものとなっている。ところが、その出発点であり、理論的源泉でもあるEriksonのアイデンティティ理論にはポストモダン・アプローチから数々の批判が寄せられ、アイデンティティ概念は混乱状態に置かれている。その批判とは、アイデンティティ概念を達成・個体論・首尾一貫性によって理解する批判である。本稿では、Eriksonのアイデンティティ理論とそれ以降の研究を検討することで、こうした批判を検討し、現代社会におけるアイデンティティ形成理論に対してEriksonから引き継ぐことができる点を明らかにする。