西日本社会学会年報
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特集:熊本地震と社会学 ― 被災のリアリティと政策形成を繋ぐ視点 ―
熊本地震における車中避難の選択理由と生活上の困難
稲月 正
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2018 年 16 巻 p. 5-22

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抄録

 熊本地震での車中避難者への調査データをもとに「どのような人が、なぜ車中避難を選択したのか」「車中避難者はどのような困難に直面していたか」について分析した。その結果、以下のことが示された。

 ① 調査対象となった車中避難者の約3割は60歳以上であり、約2割は単身者であった。また、3割以上が震災前の世帯メンバーと別れた形で車中避難生活を送っていた。

 ② 車中避難を選択した理由は「余震への不安」「自宅の損傷」「避難所の問題」に大別された。ただし「避難所の問題」は、さらに「人が多く落ち着かない」と「社会的弱者の排除」に分けられた。

 ③ KH Coder を用いた計量テキスト分析からは、車中避難の選択理由として「混雑の回避」「社会的弱者の排除」「余震への恐怖」「自宅からの近さ」の4つが析出された。

 ④ 車中避難生活での困りごととして「心身の健康」「トイレなどの衛生環境」「将来への不安」「相談体制の不備」があげられた。なお、トイレについては女性の方が明らかに困っていた。また、自宅の損壊が激しい人ほど将来に不安を抱いており、必要な情報が届いていないと感じていた。

 最後に、これらの結果をもとに車中避難者支援の方向性を6項目にまとめた。

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