熊本県阿蘇郡西原村は、2016年の熊本地震において甚大な被害を受けた。本稿は、被災者における被災と対応について、西原村の地域社会空間が持つ特性、および災害発生からの時間の経過に着目しながら、西原村における複数の事例を分析していく。
まずは、災害の初動・応急期対応において、相対的にミクロな地域社会空間では構造的な「強み」が、マクロレベルでは構造的な「弱み」が存在すること、また、時間が経過していくほどに被災と対応の「個別性」が深化・拡大していくことが確認できる。
さらに、この個別性の深化・拡大は、時間が経つほどにミクロレベルにも「弱み」の構造があらわれていくことや、被災者の抱える課題が「みえない」状態に落とし込まれていくことへつながっていることが明らかになる。
これらをふまえ、災害対応・支援への社会学(者)によるアプローチの可能性を考えるならば、被災者の個別性を、対応・支援の枠組みとなる相対的にマクロなレベルにリンクさせること、そのために「みえない諸課題」を「みえる」ようにするための丁寧な調査と分析が、その一端となるであろうことを指摘できる。