西日本社会学会年報
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論文
在宅ホスピスケアにおけるボランティア活動の諸相
―インタビュー調査のデータ分析から―
孔 英珠
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2018 年 16 巻 p. 95-110

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抄録

 本稿では、在宅ホスピスボランティアの会「A」のボランティア11人から得られた在宅訪問活動における14の事例を検討し、在宅訪問活動の諸相を提示した上で、活動対象者のニーズと在宅ホスピスボランティアの役割について考察を行った。

 「A」は、終末期の患者・家族のみならず、神経難病の患者・家族や要介護高齢者・家族も活動の対象者とし、見守りや談話・交流、個別ニーズへの対応、家族に対する支援を行っていた。これらの活動は、在宅医療やホスピスケアを推進しようとする医療福祉機関との連携の中で行われていた。とりわけ医療ソーシャルワーカーが「A」と患者・家族の間でマネジメント役を果たしていることは、ボランティアや患者・家族の双方に安心感を与え、在宅訪問活動がスムーズに行われるための重要な要素となっていた。「A」の在宅訪問活動の事例から、患者・家族には公的サービスや市場では賄いきれない情緒的ニーズ・日常生活支援ニーズがあることが推察され、在宅訪問活動はそのようなニーズへの充足に有効である可能性がうかがわれた。なお、在宅ホスピスボランティアの役割については「患者・家族の全人的苦痛やニーズに寄り添いながら、生活者同士として患者・家族とふれ合う存在である」とまとめることができた。

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