西日本社会学会年報
Online ISSN : 2434-4400
Print ISSN : 1348-155X
災害社会学の体系化に向けてのデザイン
田中 重好
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2020 年 18 巻 p. 21-37

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抄録

本論では、災害社会学の基本的な考え方、災害社会学の理論の基礎的な考え方を提案する。

ハザードとディザスターとを区別した上で、災害は、ハザードが脆弱性を媒介にディザスターに変化し、その後、復興がおこなわれる一連の社会過程として捉える。

災害は、上記の社会過程に沿って、「災害の生産」と「災害の構築」の二つの側面を持っている。「生産」という視点を持つことによって、「災害は社会構造に規定されている」ことを確認できる。「構築」という視点を持つことによって、「構築された結果」(とくに、制度的に構築された結果)から出発していた災害研究を相対化し、「社会と災害との関連性」(すなわち、社会と環境との関連性)を根本から議論できるようになる。

以上のような理論的な検討を深めてゆくことによって、従来の、個別の災害ごとに「閉じた」研究からも、防災の緊急課題に応えるのに急で一般化の努力を怠ってきた研究からも、さらに、行政が推進する防災対策を無批判に受け入れて進められてきた研究からも脱却し、「正しい政策科学」的な災害社会学が構築できる。

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© 2020 西日本社会学会
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