西日本社会学会年報
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方法としての災害社会学
―理論的系譜の再検討―
室井 研二
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2020 年 18 巻 p. 7-19

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抄録

災害研究の理論的課題とは何なのか。本稿では英語圏の災害研究の理論的系譜を検討し、以下のことを主張した。(1)災害社会学の源流は発災直後の緊急対応に照準した機能主義的アプローチであるが、今日的にはむしろ災害の発生を自然環境適応の所産として捉える地理学(生態学)的アプローチから学ぶべき点が多い。(2)研究の方法論に関しては、脆弱性理論とレジリエンス論を接合する「中範囲のハザード理論」という視角が有効である。(3)日本の災害研究は欧米の災害研究の影響をあまり受けず、もっぱら都市・地域社会学の応用的研究として展開してきた。しかし、阪神大震災では脆弱性論、東日本大震災では人間生態学と通底する研究成果が生みだされ、研究の方法論に関しても欧米の災害研究に示唆を与える面がある。国産の実証的研究成果を欧米の災害理論との関連を視野に入れて意味づけ、国際的共有を図るとともに、災害を社会分析の方法論的観点として位置づけ、災害研究と既存の連字符社会学の統合や相互啓発を図ることが重要である。

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