西日本社会学会年報
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特集
〈ウムヴェルトの現象学〉としてのシュッツ行為論とエゴロジーの展開
―〈動機の社会学〉と〈私の社会学〉―
中村 文哉
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2023 年 21 巻 p. 11-25

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抄録

本稿の目的は、『社会的世界の意味構成』でのシュッツによるウェーバー批判の一節をモチーフに、知覚、意識、行為、主観的意味、自己解釈等、〈主観的な局面〉を照射するシュッツ行為論のカテゴリー群を、「社会的ウムヴェルト」という私の身体を中心に広がる間主観的世界における「行為の主観的意味構成」の視座から捉えることにより、拓かれる行為論の若干の可能性を示すことにある。「持続的な意識の流れ」というシュッツの理論的出立点は、行為の意味構成論と行為の遂行に関わる「時間問題」を開示し、「他者理解」を含む他者問題に行き着く。この過程には、行為の意味構成論を他者問題の文脈に位置づけるシュッツ行為論の、現象学的な狙いが示される。更に、シュッツ行為論は、他者体験の直接・間接性を基点に、その都度の他者の現出位相に基づく、他者理解および他者へと差し向けられた社会的行為の主観的意味構成のあり様から、他者との社会関係の多様な組織化と、それらに基づく私たちの主観的な意味世界の構造化を捉える「社会的世界の構造分析」に帰着する。本稿では、こうした仕方で、シュッツのテクストを追い、社会的行為の主観的意味構成とその理解の問題系には、〈行為者-相手(他者)-観察者〉という三者関係から成る社会的ウムヴェルトの間主観的な関係構造を足場に、件の〈主観的な局面〉に内在する世界性と他者性(社会性)が開示されている点から、「社会的世界の構造分析」におけるシュッツ行為論の可能性を、〈動機の社会学〉と〈私の社会学〉から成るエゴロジーとして、示したい。

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