2024 年 22 巻 p. 41-54
本研究は、不登校や発達特性をもつ子にとって学校経験がいかなるものであるのかを記述した上で、地域における居場所の形成過程とその機能を明らかにすることをねらいとしている。子どもの居場所「ちゃちゃルーム」(福岡市)を事例として、まずは発達特性をもつ子が学校空間から排除されていくプロセスを跡付けた。保護者へのインタビュー調査からは「過度な規律指導」「合理的配慮の欠如」「子どもと先生の信頼関係のなさ」などが排除に至る学校側の要因として挙げられたが、その背後には学校の抱える構造的問題が伏在していると考えられ、<すき間>と<ゆとり>が失われた学校空間が子どもの発達特性を強調してしまう場となっている可能性を指摘した。ついで、そうして学校から排除された子どもたちのための居場所をつくろうとする地域住民の動きを整理した。ポイントは専門職を接着剤役としたローカルなネットワークが地域で組織されたことにあり、特によりあいの森という特養が地域住民と密接な関係を築いていたことがその素地にあることが明らかとなった。最終的に、その形成過程における戦後民主主義教育の役割について若干の検討を行った。