聖マリアンナ医科大学雑誌
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原著
CT所見に基づく臓器損傷分類の治療方針との相関性に関する研究(肝・脾損傷)
大熊 正剛松本 純一山下 寛高三浦 剛史新城 安基森本 公平三村 秀文中島 康雄
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2018 年 46 巻 3 号 p. 119-128

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抄録

背景) 2008年,中島らは,推奨治療法を付記したCT所見に基づく臓器損傷分類を作成したが,これまでのところ本分類の実用性は検討されていない。今回我々は,実症例を後方視的に検討し,本分類の推奨治療と比較検討した。
対象と方法) 当施設を含む3施設で2006年4月1日から9年9ヶ月の間に経験した脾損傷96例,肝損傷117例を対象とした。対象症例をCT損傷分類で分類し,各グレードで実際に行われた治療を調査した。CT損傷分類での推奨治療法と異なる治療が行われた症例では,その理由を検証した。
結果) 各グレードで,緊急止血術が行われた割合は,脾損傷でI型0%,II型25%,III型IVR群46.7%,IV型IVR群80.1%,V型IVR群69.2%・手術群26.9%,肝損傷でI型0%,II型0%,III型IVR群24.2%・手術群3.0%,IV型IVR群76.0%・手術群8%,V型IVR群33.3%・手術群55.6%であった。いずれも損傷程度が高度になるにつれ,IVRや手術といった止血術が行われた症例が増えており,またより侵襲度の高い手術が選択されていた。一方で,合併症の治療に付随して予防的にIVRが施行されたもの,微細な血管損傷が見逃されていたため保存的経過観察となったものなど,推奨治療と異なった治療が施行された症例もあった。
結論) CT損傷分類は治療選択の参考として一定の有用があると考えられる。

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© 2018 聖マリアンナ医科大学医学会
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