聖マリアンナ医科大学雑誌
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原著
聖マリアンナ医科大学における局所進行性前立腺癌に対する鏡視下小切開拡大前立腺全摘除術の導入
中澤 龍斗西 智弘與座 直利松村 かおり佐藤 好嗣薄場 渉青木 直人藤本 瑛介蜂須賀 智勝岡 由一相田 紘一朗佐々木 秀郎
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2018 年 46 巻 3 号 p. 129-136

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抄録

【目的】前立腺癌手術の根治性の向上を図る為に鏡視下小切開拡大前立腺全摘除術(Minimum incision endoscopic radical prostatectomy with intentional wide resection: MRP–WR)を採用し導入した。そのMRP–WRの手術成績について導入前の鏡視下小切前立腺全摘除術(Minimum incision endoscopic radical prostatectomy: MRP)の成績と比較し報告する。
【対象・方法】2016年1月から2017年3月までの期間に,MRP–WRを施行した前立腺癌21例を解析対象とした。対照群は拡大前立腺全摘除術導入前の2013年4月から2015年5月までのMRP 23例を対象とし手術成績について後方追視的に解析した。手術成績の検討項目は手術時間,出血量,摘出リンパ節個数,尿道留置期間,入院期間,断端陽性率,術後初回PSA値とした。
【結果】MRP群に比較してMRP–WR群における平均手術時間は318分と有意に長く(p<0.0001),平均出血量は292 mlと有意に少なかった(p<0.0001)。MRP–WR群における摘出リンパ節は平均19個とMRP群より有意に多かった(p<0.0001)。尿道留置を挿入している期間はMRP–WR群で有意に長かった(p=0.0042)。断端陽性率はMRP群では48%に対し,MRP–WR群では19%と有意に低かった(p=0.0443)。術後初回PSA値に関してはMRP–WR群では67%の症例で測定感度以下であったのに対して,MRP群においては測定感度以下となった症例は4%のみであり,MRP–WR群で有意に低い値となった(p<0.0001)。
【考察・結論】
当院で導入したMRP–WRは,前立腺癌の完全摘出率,治療効果の向上,出血の低減という点で明らかに導入前のMRPより優れていると考えられた。

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© 2018 聖マリアンナ医科大学医学会
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