2020 年 48 巻 3 号 p. 101-108
目的
頸動脈狭窄病変を有する患者において,頭蓋内動脈硬化症(ICAD)を合併する症例は,脳血管障害再発率が高く,死亡率も高いとされている。頸動脈粥腫の性状とICADのリスクは関連している可能性があるが,これまで充分な検討は行われていない。そこで本研究は,頸動脈狭窄病変を有する患者におけるICADの合併と,頸動脈粥腫の性状ならびに動脈硬化関連バイオマーカーとの関連性について検討した。
方法
頸動脈エコー検査で動脈硬化性頸動脈狭窄(>50%, Area法)を認めた50例を対象とした。MRAで頭蓋内主幹動脈に50%以上の狭窄を有するものをICAD (+)とし,頸動脈粥腫性状(Black-Blood法MRI,超音波)ならびに動脈硬化関連マーカー(酸化LDL,LOX-1,MPO,PTX3,MMP-9,hsCRP)との関連について,ICAD (+) と (−) の患者間において解析した。
結果
ICAD (+) は50例中15例(30%)に見られ,いずれも中大脳動脈狭窄であった。単変量解析の結果,頭蓋内血管狭窄を認める群で,MMP9値(p=0.03)と高感度CRP値(p=0.02)が有意に高値であった。
結論
頸動脈狭窄病変を有する患者において,ICAD合併は,頸動脈粥腫の性状を反映する諸因子との関連は示されなかったが,血清MMP-9濃度と関連することが判明した。ICADの生成機序においてMMP-9が関与する可能性が示唆される。