2020 年 48 巻 3 号 p. 117-122
症例は71歳男性。健康診断で便潜血陽性となり,下部消化管内視鏡検査にて直腸腫瘍を指摘され精査加療目的に当科紹介となった。精査の結果,肝転移を伴う直腸癌(Ra, cT4aN2aM1a, cStage IV, 大腸癌取扱い規約第8版)と診断し,術前薬物療法施行後,原発巣に対し腹腔鏡下直腸低位前方切除術,D3郭清,回腸人工肛門造設術を施行した。術後に薬物療法を追加し,肝転移巣の縮小および新たな転移巣のないことを確認し,転移性肝腫瘍切除ならびに人工肛門閉鎖術を施行した。病理組織学的に肝腫瘍には悪性所見は認めず,硝子化を伴う線維性間質と多数の小血管からなる硬化性血管腫と診断された。肝硬化性血管腫は転移性肝癌と類似した画像を呈し,また自然退縮することもあるため薬物療法による腫瘍縮小効果と誤判断される可能性があり注意が必要である。