聖マリアンナ医科大学雑誌
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症例報告
破骨型多核巨細胞を伴う退形成膵癌の1切除例
高城 伸平 中野 浩角 泰廣松下 恒久宮原 利行尾﨑 貴洋田中 雄也大坪 琢磨中山 敏裕高木 正之大池 信之
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2023 年 51 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

症例は70代の女性。検診にて右肺に異常陰影を認めて前医を受診。CT検査の結果,肺陰影は陳旧性肺結核と判断された。その際の検査で上腹部腫瘤性病変が指摘され,精査加療目的に当院紹介となった。造影CTで膵尾部に長径約83 mmの不均一に造影される腫瘤性病変が指摘された。超音波内視鏡検査で,腫瘤は境界明瞭で内部モザイクエコーを呈していた。MRI検査では,内部の信号は不均一で一部に嚢胞を伴う腫瘤であった。以上の結果から,膵体尾部の充実性偽乳頭状腫瘍やその他の悪性病変の可能性を考慮し,外科的切除の方針とした。肋弓下弧状切開で開腹し,膵体尾部切除,脾臓摘出,所属リンパ節郭清を施行した。検体は,膵体尾部の80×75×65 mmの被膜を伴う嚢胞性腫瘤であった。当初,病理診断の結果では,上皮細胞は認めず血種と診断された。しかし,その後の診断で周囲の被膜部分に異形細胞および多数の破骨型巨細胞が指摘された。当初この部分は出血による反応性偽腫瘍病変とも考えられたが,CK7,p53陽性の異型紡錘形腫瘍細胞や多核腫瘍細胞を認めるため,広範な壊死を伴った破骨型多核巨細胞を伴う退形成膵癌の診断となった。破骨型多核巨細胞を伴う退形成膵癌の1切除例を経験したので,若干の文献的考察を含め報告する。

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© 2023 聖マリアンナ医科大学医学会
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