2023 年 51 巻 1 号 p. 15-22
本稿では戦後10~30年の期間のロボトミーとそれを取り巻く日本の社会状況について解説する。日本のロボトミーの歴史で最も激動の時代であった。脳生検問題,国際学会騒動,ロボトミー訴訟といった,苛烈な社会的圧力がロボトミーを襲った。1973年東京の国際学会騒動に巻き込まれた会長の佐野圭司および学会理事として出席していたスコヴィルに触れる。そしてスコヴィルの術式を更に進化させた広瀬貞雄の後半生の業績を記す。最後にロボトミーを封印した1975年の日本精神神経学会による精神外科否定決議に至る顛末を解説する。