聖マリアンナ医科大学雑誌
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新型コロナウイルス感染症後外来の取り組みについて
土田 知也 藤井 啓世石塚 晃介井上 陽子片山 皓太廣瀬 雅宣大平 善之
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2024 年 51 巻 Suppl 号 p. S169-S175

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抄録

新型コロナウイルス感染症は感染症法で5類感染症となり,日常生活はパンデミック前に戻りつつある。しかし,その罹患後症状については,診断法や治療が確立されておらず,長期にわたり苦しんでいる患者は少なくない。当院では2021年1月18日より,罹患後症状の診療に特化した新型コロナウイルス感染症後外来(後遺症外来)を開始した。これまでに約1,000名が紹介受診しており,その症状は倦怠感をはじめとして,頭痛や味覚嗅覚障害,記憶力の低下といったBrain fogと呼ばれる症状の他,気分の落ち込みや不安感など精神的な症状の訴えも多い。その背景には学校や仕事に行くことができない,周囲から理解がないという声の他,経済的困窮という社会的な問題を抱えていることもある。倦怠感では,自律神経障害の評価,抑うつの評価,生活習慣の乱れに伴う体重増加や筋力の評価を行うことが,Brain fogではSPECTによる脳血流の評価が重要である。罹患後症状は体位性頻脈症候群や片頭痛など新たな合併症が見つかることが多く,また既往疾患が再燃することも多い。罹患後症状としてまとめてしまうのではなく,症状からこれまでもよくあった疾患群を想定した問診,診察をして診断をつけ,治療を開始することが必要である。また身体的な症状のみならず心理的,社会的背景に目を向けて対応していくことも重要である。

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