口腔・咽頭科
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原著
慢性上咽頭炎の重症度分類と上咽頭擦過療法の有効性
大野 芳裕
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2021 年 34 巻 2 号 p. 163-172

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抄録

慢性上咽頭炎は,後鼻漏・咽喉頭違和感・慢性咳嗽・頭痛・めまい・肩こりなど不定な症状を呈するため,本疾患に着目しないと見逃される可能性がある.慢性上咽頭炎に対しては上咽頭粘膜を塩化亜鉛溶液で擦過する,上咽頭擦過療法(Epipharyngeal AbrasiveTherapy:EAT)が有効とされている.そこで今回慢性上咽頭炎症例92名に対して,1%塩化亜鉛溶液によるEATを施行した.患者には原則として生理食塩水による上咽頭洗浄を併用した.治療前後に鼻咽腔内視鏡所見の重症度分類と自覚症状のアンケートならびにNumerical Rating Scale(NRS)を施行し,局所所見および自覚症状の治療効果を検討した.局所所見の重症度は,上咽頭粘膜の発赤・腫脹を4段階でスコア化し,後鼻漏・痂疲を認める場合に加点した.自覚症状は,治療前後に主訴を含む各症状(後鼻漏,咽喉頭違和感,咽頭痛など)のアンケート(4段階)と全身状態のNRS(10段階)による評価を行い統計学的に解析した.改善率は局所所見72.8%,主訴88.0%,NRS 79.3%で,局所所見と主訴の改善との間に有意な関連を認めた.慢性上咽頭炎に対するEATの有効性が示唆された.

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© 2021 日本口腔・咽頭科学会
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