口腔・咽頭科
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最新号
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総説
「パネルディスカッション1 明日から私も嚥下診療」
  • 西山 耕一郎
    2024 年 37 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    [早期公開] 公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー
    高齢者嚥下障害例は急増し,耳鼻咽喉科開業医は嚥下障害の対応から避けて通れない.多数の嚥下障害例を診察して幾つかのことに気が付いた.嚥下障害は,咽頭期の障害例が多い.嚥下反射が起きないと誤嚥する.声門閉鎖不全改善手術で液体の誤嚥が改善する.輪状咽頭筋弛緩不全で食道入口部が開かないと誤嚥する.常食を食べて嚥下性肺炎を発症しても,食形態を嚥下機能低下に対応して変更することで,経口摂取を継続できる場合がある.咽頭期に対するリハビリテーションが必要である.軽症例は,食事中の姿勢調整等の嚥下指導で食物誤嚥を減らせる.病態に対応した適切な治療を行えば,抗菌薬の投与の機会を減らすことができる.さらに嚥下性肺炎による入院を減らし,医療費が削減できる.開業医が嚥下診療を行えば地域医療に貢献でき,さらに増収にもつながる.
特別講演2
  • 中野 貴司
    2024 年 37 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー
    予防接種とは,ワクチンを用いて行われる感染症を予防するための手段である.ワクチンの種類(モダリティ)は,これまで生ワクチンと不活化ワクチンに大きく分類されていたが,COVID-19を予防するワクチンとしてmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンが広く使われるようになった.パンデミックが始まって1年を経過した頃,海外そして日本でCOVID-19ワクチンの接種が始まり,初回免疫を済ませて一定期間が経過した後は,追加接種が必要なことも明らかとなった.病原体ウイルスの変異や,呼吸器感染症であるがゆえのワクチンの課題も多々あるが,予防接種は感染症対策の基本であることに変わりはない.
特別企画 新時代の口腔咽頭科学を切り開く! 新任教授陣による抱負と学会への提言
  • 荒木 幸仁
    2024 年 37 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー
    喉頭機能温存は咽喉頭疾患治療において,患者のQOLに直結する最重要課題である.本邦においては当科で開発した経口的咽喉頭部分切除術Transoral videolaryngoscopic surgery:TOVSをはじめとした複数の術式が発展してきている.良好な腫瘍制御と機能温存が報告されており,頭頸部癌診療ガイドラインにおいても早期咽喉頭癌への治療選択肢の一つとなっている.また最重要予後因子である頸部リンパ節転移の制御に対する低侵襲化も重要な課題である.さらにはより機能温存が求められる咽喉頭良性疾患に対しても,経口的手術環境は有用である.経口的手術は低侵襲かつ腫瘍制御の面からも理想的な術式であり,今後の更なる普及が期待される.
シンポジウム3 舌下神経刺激療法を究める ~耳鼻咽喉科頭頸部外科医が活躍するために!
  • 鈴木 雅明
    2024 年 37 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー
    咽頭筋にはphasic patternを示す筋群とtonic patternを示す筋群があり,前者は呼吸,音声,嚥下運動の際に強く速く収縮する役割を担い,後者は咽頭腔気道保持に重要な役割を担う.咽頭筋は呼吸中枢より遠心性にコントロールを受け,また呼吸中枢への求心性のフィードバック情報伝達機能を持つ.閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)患者ではこれらの咽頭筋機能が低下しており,高齢者OSAではさらに低下している.舌下神経刺激療法は咽頭開大筋であるオトガイ舌筋,オトガイ舌骨筋,横舌筋の主にtonicな線維を収縮させることにより,吸気時の舌を前方に突出させる治療法である.その際,開大筋を前方に引き出す力に対して逆方向への反発する力が生じるという問題点が生じる.一方,咽頭開大筋と閉鎖筋の主にtonicな線維が同時収縮させれば,咽頭気道内腔を保持させることができる.舌の位置や咽頭腔の硬さをバランス調整し咽頭腔を保持させる神経刺激,また求心性線維に作用させ咽頭陰圧に対する咽頭筋反応性を改善させる神経刺激が,今後の方向性として注目されている.
原著
  • 阪上 智史, 藤澤 琢郎, 八木 正夫, 鈴木 健介, 清水 皆貴, 中村 尚広, 野田 百合, 岩井 大
    2024 年 37 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー
    当科では下咽頭癌のうちTis~一部のT3病変に対して経口的内視鏡下咽頭腫瘍切除術(endoscopic laryngopharyngeal surgery:ELPS)を施行しているが,2016年~2021年の間に下咽頭癌に対してELPSを施行した症例は38例であった.5年間再発や転移を認めず治癒した症例は3/38例であった.一方で2/38例で頸部後発転移が見られた.治癒した3例と転移を認めた2例の比較では,術前の内視鏡所見では治癒した3例は0-Ⅰs型で,転移を生じた2例は0-Ⅰs+Ⅱc型であった.病理学的所見では5例ともに腫瘍厚1,000μm以上で,脈管侵襲は認めなかった.
    下咽頭表在癌は腫瘍厚1,000μm以上または,脈管侵襲がリンパ節転移のリスクとされているが,その他の因子として内視鏡所見が関わる可能性が考えられた.
  • 篠原 宏, 清水 啓成
    2024 年 37 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー
    背景:咽喉頭異常感症や咽頭異物で,咽喉頭を観察して異常所見がなく,診断に苦慮することは少なくない.そのような症例に通常の耳鼻科用鼻咽喉電子内視鏡を用いて食道内腔を観察し有効であった.
    方法:鼻咽喉電子内視鏡検査後に内視鏡先端を食道内に挿入する.唾液や少量の水を嚥下させて食道内腔が拡がっている間に食道内を観察した.
    結果:食道癌,食道異物,ステーキハウス症候群などが観察できた.
    考察:本法は簡便な方法ではあるが,異常所見を認めた際には即座に診断がつき,有効な検査である.しかし鼻咽喉電子内視鏡を用いた食道内の観察は,その範囲,精度に限界があるため,異常所見を認めなかった際の評価や判断には慎重になるべきである.
症例
  • 中野 光花, 髙田 由香, 篠原 宏, 清水 啓成
    2024 年 37 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー
    メトトレキサート(Methotrexate:MTX)は関節リウマチの治療薬として広く用いられている.副作用として,口内炎や骨髄抑制などを起こすことが知られているが,骨髄異形成症候群(myelodysplastic syn­drome;MDS)を発症したという報告はない.今回MTX内服中に重度の口腔および咽喉頭粘膜びらんと汎血球減少を生じ,MDSの診断に至った症例を経験したので報告する.本症例ではMTX中止により粘膜びらんと汎血球減少の改善を認めたことから,MTXの細胞障害性により治療関連MDSを発症した可能性が考えられた.MTX内服中の高齢者の口内炎は,骨髄抑制やMDSなど重篤な副作用の前駆症状である可能性があり,注意が必要である.
  • 宮﨑 孝, 若崎 高裕, 次郎丸 梨那, 松尾 美央子, 中川 尚志
    2024 年 37 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー
    口腔領域の転移性悪性腫瘍は,全口腔悪性腫瘍の約1%で,中でも膵癌の舌転移は極めて稀とされる.今回,膵癌舌転移の1例を経験したので報告する.症例は56歳男性,主訴は舌痛,舌腫瘤.X年膵癌cT3N1aM0,Stage ⅡBの診断で膵全摘術を施行.X+2年縦隔リンパ節再発を来し,緩和化学療法を開始した.PDによるレジメン変更及び縦隔病変への放射線治療により,病勢はコントロールできていた.X+4年,舌に疼痛を伴う腫瘤性病変が出現した.各種検査で膵癌舌転移と診断した.舌腫瘍は増大傾向で疼痛悪化に伴う経口摂取困難が生じていたため,緩和治療として舌部分切除術を施行した.舌痛は改善,経口摂取も良好となった.今回の外科治療は,がん終末期のQOL改善に寄与できた.
  • 小泉 麻里子, 寺澤 耕祐, 飯沼 亮太, 宮崎 龍彦, 柴田 博史, 大橋 敏充, 小川 武則
    2024 年 37 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー
    Epstein-Barrウイルス(EBV)は上咽頭癌,ヒトパピローマウイルス(HPV)は中咽頭癌との関連があるが,これらのウイルス関連癌が同時に発生することは稀である.今回我々はEBVとHPVによる同時性咽頭重複癌を報告する.症例は58歳男性,2週間続く左耳閉感を主訴に受診した.左滲出性中耳炎および頸部リンパ節腫脹を指摘され,上咽頭側壁および中咽頭前壁に腫瘍性病変を認めたため当科紹介となった.精査の結果,EBV-encoded small ribonucleic acid (EBER) in situ hybridization (EBER-ISH)陽性上咽頭癌cT2N2M0,p16陽性中咽頭前壁癌cT2と診断し,シスプラチン同時併用化学放射線治療を施行した.2年後,上咽頭癌の局所再発を来したが,combined positive score(CPS)20以上であり,ペムブロリズマブと化学療法の併用療法を施行し,以後再発なく経過観察中である.
  • 菅谷 翔太, 辻川 敬裕, 椋代 茂之, 杉山 庸一郎, 岡野 博之, 平野 滋
    2024 年 37 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー
    上咽頭乳頭腺癌はきわめて稀な悪性腫瘍であり,甲状腺転写因子-1(Thyroid Transcription Factor-1:以下,TTF-1)発現をはじめ甲状腺乳頭癌との組織形態的類似性がある.今回,我々は上咽頭に限局した乳頭腺癌を早期に診断し,先端可動型硬性内視鏡を経口的に挿入し,良好な視野と作業空間を確保し,経口的に切除し得た症例を経験した.本疾患の病理学的特徴と鑑別,および,本例で取り得た術式に関して検討を行なった.極めてまれな本疾患の手術アプローチは経鼻内視鏡下が大多数を占めるが,本症例を通して,腫瘍の進展範囲や部位によって経口内視鏡下の切除も選択肢として検討できる.
  • 神戸 史乃, 小池 修治, 大澤 悠
    2024 年 37 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー
    2015年に日本小児リウマチ学会等による小児期シェーグレン症候群診療の手引きが提唱された.当科で経験した小児期シェーグレン症候群(Sjögren syndrome:SS)の4症例について報告する.乾燥症状を訴えた例はなく,反復性耳下腺腫脹や皮疹,発熱など非典型的な症状を呈した例が多かった.いずれの症例でもガムテスト,シアログラフィ,小唾液腺生検でSSに合致した所見を呈しており,潜在的な腺破壊の存在が示唆された.超音波検査では唾液腺内の嚢胞形成や高エコー帯の所見を認め,小児例のスクリーニングに適していると考えられた.また,無菌性髄膜炎や全身性エリテマトーデス等,重篤な併存症の報告があり,小児科との綿密な連携が必要である.
  • 鈴木 聡崇, 垣野内 景, 室野 重之
    2024 年 37 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー
    単純ヘルペスウイルス(以下herpes simplex virus,HSV)は不顕性感染を含めれば成人の50%が感染している.HSVは再活性化により顔面神経麻痺や口唇・口腔のアフタの原因となる.他方,初感染は不顕性感染の場合が多いが発熱,口腔・咽頭のアフタと歯肉腫脹を伴って発症する歯肉口内炎型と,咽喉頭の広い範囲にアフタ,粘膜疹,潰瘍が多発し,激しい咽頭痛を伴い全身状態不良となることが多い咽頭扁桃型がある.HSVの初感染の診断においては血清抗HSV-IgG抗体と血清抗HSV-IgM抗体(以下抗HSV-IgM抗体)の血清抗体価の測定が有効であるが,比較的早期に陽性化する抗HSV-IgM抗体であっても発症後7日未満では陽性化しない場合があることが知られている.今回我々はHSV初感染による急性咽頭炎で抗HSV-IgM抗体が発症5日目の初感染採血で陽性となった症例と,発症6日目初診時に陰性だった抗HSV-IgM抗体が11日目に陽性化した症例を経験したので,2症例を比較し文献的考察を交えて報告する.
  • 舘田 豊, 鈴木 貴博, 佐藤 輝幸, 山﨑 宗治, 野口 直哉, 太田 伸男
    2024 年 37 巻 1 号 p. 81-88
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー
    経鼻胃管は,経腸栄養,胃減圧や洗浄,薬剤投与,検体採取などの目的で挿入される.経鼻胃管の誤挿入で最も多いのは気管への挿入である.今回の症例は胃液採取目的で経鼻胃管が挿入され,意思疎通困難に伴う経鼻胃管挿入時の咽喉頭損傷をきっかけに,抗凝固薬内服,加齢による軟部組織の脆弱性や栄養状態が複合的に影響し頸部気腫,咽喉頭粘膜下血腫・腫脹,上気道狭窄を合併し緊急手術を要した.経鼻胃管挿入の危険が高い患者や経鼻胃管挿入が困難な患者では,可能な限りX線透視,喉頭鏡や喉頭ファイバーで観察しながら施行することが望ましい.胃管挿入は特に高齢者には愛護的に施行し,内服薬など日常診療においても念頭におくべきである.
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