2022 年 35 巻 1 号 p. 49-54
今回,ステロイド長期内服による免疫抑制状態患者において,歯性感染症を契機とした下顎骨骨髄炎に続発した急性化膿性耳下腺炎を経験した.初診時の臨床所見からは耳下腺悪性腫瘍を疑ったが,細胞診では炎症性変化で化膿性耳下腺炎と診断した.しかしながら,ステノン管開口部からの排膿はなく,頻度の高い逆行性感染は否定的であった.細菌検査で歯周病菌であるPorphyromonas gingivalisを検出したこと,CTで左下顎に歯根嚢胞および左下顎骨骨髄炎を認めたことから,歯根嚢胞の化膿を契機に発症した下顎骨骨髄炎の増悪により,炎症が隣接する耳下腺へ波及したと診断した.過去の報告に従って,4週間という長期間の抗菌薬投与を行い,骨髄炎の改善を認めた.免疫抑制患者における難治性耳下腺炎では原因として骨髄炎の関与を疑う必要があると考える.