口腔・咽頭科
Online ISSN : 1884-4316
Print ISSN : 0917-5105
ISSN-L : 0917-5105
口腔癌に対する超選択的動注化学療法
前田 明輝藤 賢史檜垣 雄一郎冨田 吉信
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 15 巻 3 号 p. 345-351

詳細
抄録

動注化学療法は, 頭頸部癌に対して機能を温存しつつ治療成績の向上を図るために用いられている.口腔癌に対しては浅側頭動脈経由, 又は大腿動脈からSeldinger法を用いた動注化学療法が行われている.今回我々は口腔癌進行症例, 再発症例で, 患者の同意が得られた症例に対しSeldinger法を用いた超選択的動注療法を施行したので, その効果, 副作用を中心に報告する.対象は1996年4月~2002年6月に当科でSeldinger法による超選択的動注化学療法を施行した先行治療のある口腔癌14症例 (計33回) で, 手術不能例9例, 手術拒否例5例であった.全体の奏効度はPR8例, NC6例で, 奏効率57%であった.うち手術不能例の奏効度はPR7例, NC2例, 奏効率78%であった.G3以上の副作用は好中球減少のみで, G3以上の消化器症状, 腎機能障害などは認めなかった.PR8例中7例は先行治療から初回動注まで6ヶ月以上間隔が経過しており, 1例は先行治療に化学療法がなかった.先行治療で白金製剤を用いた症例では, 先行治療からの治療間隔が長い程, 奏効度が高く, これは白金製剤に対する腫瘍の薬剤耐性が時間の経過と供に低下した為と考えられた.
また, 超選択的動注療法は今回の効果と副作用の発生頻度から, 他に有効と考えられる治療法のない症例や手術拒否症例などを対象として試みてもよい治療法の一つと考えられた.

著者関連情報
© 日本口腔・咽頭科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top