水利科学
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特集:平成28年熊本地震で生じた山地災害
平成28年(2016年)熊本地震によって生じた山腹崩壊
黒川 潮
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2018 年 61 巻 6 号 p. 18-33

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抄録

平成28年(2016年)熊本地震においては,4月14日21時26分に発生したマグニチュード6.5の地震(前震)に続いて,4月16日1時25分にマグニチュード 7.3の地震(本震)が発生し,ともに最大震度7を記録した。一連の地震活動 により50名の方が犠牲となり,林業関係でも約440億円の被害が発生した。前震発生直後に行った調査においては,大規模な山腹の崩壊は確認できなかったが,本震後の調査においては,緩斜面における地すべり性の崩壊,深層崩壊,表層崩壊およびそれに伴う土石流等,様々なタイプの土砂災害が発生した。山腹崩壊は尾根部分の草原から発生している例が多く見られ,斜面下部に存在している森林が崩壊した岩石の移動を抑止している例も見られた。この地震によって森林内には上空から確認できない多数の亀裂が発生し,地盤内に雨水が浸透しやすい状態となっている。

6月下旬の豪雨では地震時に亀裂の入っていた斜面が拡大崩壊しており,今後も山腹崩壊の危険性が懸念される状況である。

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