水利科学
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最新号
No378
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一般論文
  • 中 達雄, 中矢 哲郎, 樽屋 啓之
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 65 巻 1 号 p. 1-30
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2022/07/18
    ジャーナル フリー

    水田灌漑へのパイプラインの導入から約50年を経て,大規模経営体が主流となった農業構造と農業水利の現状から,今後必要とされる低平地水田配水パイプラインの水利用機能と水理構造を提案する。その前提として,農林業センサスと関連する3地区の現地調査から,大規模経営体と残留する小規模農家も視野に入れた水田配水ブロック内の今後の経営体の形態と水利用構造を想定する必要性を考察した。そして,既存の農業水利に関する農業経営学分野の研究成果を援用して,配水ブロック内の水管理主体の将来像や目指す水管理方式を示した。 水管理の省力化の必要性を踏まえ,パイプラインの要求性能を整理して設計改善の基本を提案した。配水槽方式の導入による最適設計と,パイプラインの中間バルブによるブロック配水などの有用性を考察した。さらに,省力化や管理者の高齢化に対応するためにパイプライン水管理への情報通信技術(ICT)の応用についてソフト・ハードの両面から考察した。その中で圃場の水管理作業を幹線・支線水路を管理する土地改良区などの水管理主体が代替し経営体が行う営農作業から分離する考えを明示した。

  • 大堂 啓幸
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 65 巻 1 号 p. 31-43
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2022/07/18
    ジャーナル フリー

    鹿児島県は,土地の一部がシラスに覆われており,治山事業においてもシラスに対応した工法を数多く採用している。 その中で,約20年前に木製構造物のみで整備を図った治山施設があり,今後の長寿命化のための個別施設計画策定の資料とするため,その現状を調査したので報告する。

  • ~流木災害防止緊急治山対策プロジェクト~
    中澤 敏雄
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 65 巻 1 号 p. 44-62
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2022/07/18
    ジャーナル フリー

    平成29(2017)年九州北部豪雨による甚大な流木災害等の発生を受けて,林野庁では,概ね3年間で緊急的・集中的に流木捕捉式治山ダムの設置などの流木対策を推進することとしている。そして中部森林管理局では,流木捕捉式治山ダムの新設に加えて,局管内の国有林に設置した約1万基の治山ダムを有効活用するための工法として「流木捕捉工」を考案し,更なる流木対策の推進に結び付けたいと考えている。 流木を直接捕捉する鋼製の流木止め(スリット)1本と独立した基礎コンクリートを組み合わせた「流木捕捉工」は,既設治山ダムの堆砂末端付近へ横一列に設置する。施工方法は,設置場所の土砂掘削を行い,地すべり防止工の集水井など縦穴を掘る際に用いる鋼製の支保材(以下,「ライナープレート」という。)を残存型枠として設置して,その中にコンクリートを打ち込み,その天端へ流木止めを据え付けて完成となる。 試験的な取り組み段階であるが,同等規模の流木捕捉式治山ダムの新設に比べて施工が容易で安価であり,簡易な方法で流木止めを渓床全幅まで広く設けることが可能であることから,より多くの場所において流木対策に役立てることができるものと考える。また,危険な渓流内での作業時間を短縮することが可能であり,作業者の安全対策上も有効な工法と考えられる。今後,渓床の変動調査や洪水時の状況確認などモニタリングを継続的に実施し,更なる流木捕捉技術の洗練に努めて参りたい。

  • 宗接 聖史
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 65 巻 1 号 p. 63-72
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2022/07/18
    ジャーナル フリー

    広範囲の事業区域に対して事前防災を検討する際は,事業優先度を検討し,優先度の高い箇所から事業に着手していくことが望ましいが,これまでは優先順位の選定を行う明確な手法がないため,事業要望に基づき着手してきた。 今回,従来の手法に加え,航空レーザ計測データから作成した地形表現図を活用し,微地形の判読や事業優先箇所の選定を行った。従来の基本図からの地形判読と比べ地形表現図の方が地形の異常・特徴等が読み取りやすく,微地形を直感的かつ明確に判断出来るため,判読漏れ,判読ミスの軽減につながった。その結果,事業区域の災害前兆となる微地形を確認することが出来た。また,現地踏査の際も微地形判読の箇所を優先して確認することが出来,現地踏査の基礎資料としても有効性が確認出来た。 これらの結果から,現地の微地形や災害形態を考慮した施設配置を行ったので報告する。

  • ──それぞれの見た有吉堤騒動──(その2)
    和田 一範
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 65 巻 1 号 p. 73-113
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2022/07/18
    ジャーナル フリー

    多摩川左右岸築堤争いの大騒動,有吉堤騒動においては,多摩川両岸の地域住民,各村役場,各郡役所,県,府,両議会議員,帝国議会議員,内務省など,様々な当事者たちが,それぞれの役割の中で大奮闘をしている。これら立場を超えた様々な当事者たちが,それぞれの視点から一連の顛末をどのように見ていたか,そしてどのような行動をとったかは,防災における自助・共助・公助の連携を考える上で,重要な位置づけを持つ。

    神奈川県立公文書館所蔵の飯田家文書(ID2200710116多摩川筋盛土工事行政訴訟,ID2200710134同名)には,これら当事者たちが,自らの視点で,一連の騒動を経緯として記した,生々しい記述がある。

    大正6 年(1917年)8月21日付で,神奈川県土木課の河川管理吏員から横浜区裁判所検事局に提出された,五十間盛土事件の説明文書には,「多摩川筋御幸村築堤沿革書」が添付され,アミガサ事件(大正3年〈1914年〉9月16日)の発生から,有吉堤建設の騒動を経て,これが正式な河川堤防として内務省の認可を受け,大正5年(1916年)10月19日に残事業が竣工するまでの経緯を説明している。ここに,多摩川を管理し,地域の防災をつかさどる,神奈川県の行政官としての見解を見てとることができる。

    同じく大正6 年(1917年)9月4日付で,御幸村有志秋元喜四郎氏から,横浜区裁判所検事局に宛てた「上申書」には,地元住民の立場から,アミガサ事件の発生から有吉堤建設の騒動を,詳細に説明するとともに,有吉堤騒動の決着に際しての平間の渡し下流150間の旧堤(突堤)撤去の扱いと,これを不服として,その後,水防用資材としての土の仮置きと称して五十間の盛土を行った経緯を述べている。ここに,一連の騒動に関しての,地元住民としての見解を見てとることができる。

    さらに,国立国会図書館所蔵の「大正五年公文雑纂,多摩川築堤問題顚末」は,内務省土木局の担当技師の立場から,一連の騒動の顛末を公文書のかたちでとりまとめたもので,いわば河川行政の所管官庁としての公式見解が述べられている。

    本稿では,これら3件の文書を,活字にして紹介するとともに,比較対比をすることによって,有吉堤騒動における,各者の連携・協働とすれ違いについて分析をしたい。防災の主役,自助・共助と公助との連携,さらには公助間の連携にかかる,多くの教訓がそこにはある。

    アミガサ事件と有吉堤,多摩川直轄改修への道の一連の騒動にみる,自助・共助・公助の連携・協働とすれ違いの中には,特に,自助・共助と,公助との連携・協働が重要であり,あわせて,地域住民に寄り添った公助間の連携のあり方が重要であるという点において,現代の防災に与える大きな教訓が見いだせる。

海外情勢
  • 村上 哲生, 林 裕美子, 大橋 裕子, 上野 薫, 南 基泰
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 65 巻 1 号 p. 114-129
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2022/07/18
    ジャーナル フリー

    ブータン王国西部の河川で,現場水質と水生無脊椎動物相を調査した。簡易水質観測のみでは,生活排水による汚染を感知することは難しく,水生昆虫を中心とした生物指標を併用することが望ましいと考えられた。指標性の判断は,日本の河川で用いられるスコア値(汚濁耐性を示す値)が転用できる。 殺生を忌むブータンでは宗教的な生命観が日本と異なることや,日ごろから水生生物と触れあう習慣がないことから,水生生物を利用した環境教育を日本での先行例と同じ方法で実施するには,初等教育の枠組みの変更も含めた工夫が必要となる。

  • ~不思議な湖,インレー(Wonder Lake─Inlay)~
    木村 穣
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 65 巻 1 号 p. 130-145
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2022/07/18
    ジャーナル フリー

    インレー湖はミャンマーで2番目に大きな淡水湖で,豊かな自然環境とユニークな文化活動が融合した景勝地である。特に大規模なトマト水耕栽培は世界的にみても稀有な存在である。一方で,上流部には石灰岩層に起因すると考えられるガリー地帯が広がっている。特に近年は上流域での開発が進み土壌浸食のスピードが増していると考えられている。さらに地球温暖化による降雨量の変動により水位の変動が大きくなっており,水運に頼る湖内での社会経済活動に著しい影響の出ることが危惧されている。独立行政法人国際協力機構(JICA)では統合流域管理として多面的なアプローチを提案しており,その一環として実施された浮遊物質量調査では,流入河川よりも流出河川の方が濁りが少ないという結果が出されている。

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