2018 年 61 巻 6 号 p. 52-75
事業に住民の意見を反映させようというボトムアップ的な意見集約手法が形骸化してしまってはいけない。ファシリテーターの技量に負わせてしまうのではなく,発言を阻害する人文・社会学的な要因を探り,ボトムアップ的発言を醸し出す方策について研究が推進されるべきである。本報告では,バーンスティンの「限定コード/精密コード」及びダグラスの「Group Grid 理論」そして藤垣の「硬い科学観」を踏まえ,ボトムアップ的発言を醸し出す場の特徴を解析する手法を提案した。この手法は,「硬い人文的な使命感 OCM」,「硬い社会的な使命感 OSS」,「硬い自然科学的な使命感 OND」の三つの類型化指標を用い,社会的活動を八個の領域に区分しその性質を明らかにするものである。例えば「原子力村の開発研究」は三つの類型化指標のいずれもが"硬い使命感"である領域に分類された。様々な社会活動に本手法を適用した結果,各活動の特徴を露わにでき有用であることがわかった。そこで次に,サイエンスカフェやシナリオワークショップなどのボトムアップ的な意見集約手法の特徴を分析し,ボトムアップ的発言を醸し出すための留意点を提示した。