水利科学
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一般論文
木曽川中下流域の水神の分布
──河川地形や河川利用との関連を中心に──
村上 哲生
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2020 年 64 巻 3 号 p. 113-135

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抄録

木曽川中下流域(岐阜県八 ~三重県桑名市)の水神分布を調査した。 木曽川岸からの1,000m 圏内に分布する神社数は200余り,主祭神を天照とする神明社の数が最も多かった。また,堤防上の小規模な川除社でも,天照を祭神とする祠の割合が大きかった。神明社の優占は,特に洪水が頻発する地域で顕著であり,天照の水神的な性格と明治以降の合祀政策の結果であると考えられた。稲荷社が破堤の危険性が大きい地形に置かれる例も発見された。治水の目的で祀られている稲荷社には,水神社が吸収,合祀されていた。祭神を特定しない水神祠,水神碑は治水,利水,雨乞いなど多様な目的のために祀られていた。金毘羅は,渡船場址付近の神社で祀られる例が多かった。川祭は,天王祭として行われるが,素戔嗚を祀る神社以外でもその例は多く,むしろ水神との関連が深く,六月祓が起源と考えられる。木曽川沿いの神社の祭神,特に境内社のそれは,合祀や不十分な管理のため神号が判別できないものが多く,過去の水神信仰を復元することが難しくなりつつある。

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© 2020 一般社団法人 日本治山治水協会
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