抄録
症例は36歳男性で,平成13年悪性髄膜腫に対して腫瘍摘出術が施行された.平成16年4月急性膵炎を発症し,腹部CTでは膵体部に石灰化を含む腫瘤陰影がみられるも慢性膵炎変化とされ経過観察となった.半年後の腹部follow up CTで膵体部の石灰化を含む腫瘤の増大が確認されたため,平成17年8月当科紹介入院となった.入院時の腹部CTでは膵体部に内部石灰化を伴う径5cmの不整形腫瘤を認め,広範囲な門脈腫瘍塞栓も認めた.同年9月開腹生検術を施行し,病理組織学的に間葉系腫瘍細胞の増生と免疫組織学的にc-kit陽性を認め,膵原発GISTと診断された.術後よりメシル酸イマチニブを投与したが腫瘍は著明な増大傾向を示し,2006年5月腫瘍破裂で死亡した.剖検の結果,膵腫瘍はmesenchymal chondrosarcomaと診断された.これまでの病理標本を再検討した結果,初回脳腫瘍は脳硬膜原発mesenchymal chondrosarcomaであり,同腫瘍が膵転移をきたした症例であると考えられた.Mesenchymal chondrosarcomaの膵転移は非常に稀で,さらにc-kit陽性を示すmesenchymal chondrosarcomaはこれまでに報告がなく自験例が最初の報告と思われたので若干の文献的考察を加え報告する.