2011 年 26 巻 4 号 p. 531-537
69歳男性.糖尿病の精査中に膵頭部腫瘤を指摘された.膵生検を施行し膵頭部癌と診断した.CT上で主幹動脈浸潤等は認めなかったが両肺底部に約5mm大の小結節を認めた.肺転移の可能性を否定できなかったため切除不能膵癌と判断しGemcitabine(GEM)単剤による全身化学療法を開始した.GEM療法を11コースまで施行したが,肺病変は不変であり良性変化の可能性が高いと考えた.主幹動脈浸潤や転移を疑う新たな病変の出現を認めず,根治的切除可能と判断し膵頭十二指腸切除術を施行した.術後病理検査では膵頭部腫瘤の大部分には線維化がみられ,その一部に癌腺管の残存を認めた.腫瘍部分には浸潤癌も認められたが,上皮内癌を含む上皮内腫瘍の成分が少なくなかった.線維化領域には化学療法施行前は腫瘍腺管が広がっていたと考えられ,GEMにより組織学的に著明な抗腫瘍効果が得られたと考えられた.文献的考察を含めて報告する.