膵臓
Online ISSN : 1881-2805
Print ISSN : 0913-0071
ISSN-L : 0913-0071
症例報告
インスリノーマとの鑑別が困難であった膵島細胞症の1例
中山 雄介大江 秀明松林 潤余語 覚匡鬼頭 祥悟花本 浩一北口 和彦浦 克明平良 薫吉川 明石上 俊一田村 淳白瀬 智之土井 隆一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 26 巻 5 号 p. 613-618

詳細
抄録

症例は42歳,女性.冷感とふるえを主訴に近医にて精査されたところ,腹部CTで膵尾部に8mmの腫瘤を認め,膵インスリノーマが疑われた.選択的動脈内カルシウム注入法にて,脾動脈刺激でのインスリン値の上昇反応を認め,膵尾部のインスリノーマと診断した.脾温存脾動静脈温存膵尾部切除術を行ったところ,膵尾部の腫瘤は肉眼的に副脾であり,術中超音波検査で副脾以外に腫瘤を同定できなかったために,(1)脾動脈領域の微小インスリノーマの存在,(2)膵島細胞症の可能性を考え,脾動脈領域を網羅する体部の追加切除を行った.病理組織学的に,膵島細胞症と診断され,また膵尾部の腫瘤は膵内副脾と診断された.術後,低血糖症状は消失した.成人発症の膵島細胞症は稀であり,さらに膵内副脾を合併した報告は今までにないが,インスリノーマと術前診断した場合でも,膵島細胞症を念頭に置くことで,適切な治療が可能になると考えられた.

著者関連情報
© 2011 日本膵臓学会
前の記事 次の記事
feedback
Top