膵臓
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原著
切除不能進行膵がん患者に対する塩酸ゲムシタビン療法対S-1療法の費用効用分析
栗原 竜也伊東 那々子向後 麻里清水 俊一嶋田 顕小西 一男米山 啓一郎井廻 道夫木内 祐二
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2012 年 27 巻 2 号 p. 185-193

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抄録

[目的]切除不能進行膵がんにおける標準治療の塩酸ゲムシタビン(GEM)療法に対する,テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合カプセル(S-1)療法の薬剤経済学的優位性を検討することを目的に,費用効用分析を行った.
[方法]進行膵がんの臨床経過を示す判断分析モデルを作成した.文献調査により,判断樹の各確率点における移行確率と生存効果を算出した.費用は,切除不能進行膵がん患者の診療録および診療報酬明細書の調査により算出した.効用値は,モデルシナリオのQOLを医師がEuroQol 5-Dimension(EQ-5D)で評価し算出した.得られたパラメータを用い費用効用分析を行った.
分析視点は保険者とし,各治療法の費用効用比および増分費用効用比を算出した.モデルの頑健性はトルネードダイアグラムで評価した.
[結果]期待費用はGEM療法で1,636,393円,S-1療法で985,042円,期待獲得質調整生存月(QALM)はGEM療法で3.79 QALM,S-1療法で7.18 QALMであった.費用効用比はGEM療法で431,766円/QALM,S-1療法で137,192円/QALMであり,増分費用効用比は-202,913円/QALMであった.一元感度分析においても結果が逆転することはなく,モデルの頑健性が示された.
[考察]S-1療法は,GEM療法に比べ少ない費用でより多くのQALMを獲得できる,より費用対効用に優れた治療であると考えられた.

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© 2012 日本膵臓学会
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