膵臓
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27 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
特集:生活習慣と膵疾患
  • 大槻 眞
    2012 年 27 巻 2 号 p. 93-95
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
  • 北村 勝哉, 吉田 仁, 佐藤 悦基, 岩田 朋之, 野本 朋宏, 湯川 明浩, 山崎 貴久, 本間 直, 池上 覚俊, 井廻 道夫
    2012 年 27 巻 2 号 p. 96-101
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    当施設におけるbody mass index(BMI)からみた重症急性膵炎(SAP)の予後について検討した.SAP 139例におけるBMI(kg/m2)の内訳は,25未満が64.7%,25~30が25.2%,30以上が10.1%であった.BMI 25未満(90例)と25以上(49例)の比較では,初期輸液量,base excess,PaO2/FIO2,CRP,年齢,腹囲,HbA1c,メタボリック症候群(MetS)陽性率に有意差を認めた.BMI 30未満(125例)と30以上(14例)の比較では,初期輸液量,PaO2/FIO2,年齢,腹囲,HbA1c,MetS陽性率に有意差を認めた.しかし,各々の合併症併発率,入院期間,致命率に有意差を認めなかった.SAPの肥満例は,非肥満例と比較し,年齢層が低く,呼吸障害併発例が多かったが,肥満とSAPの予後との関連性は認められなかった.
  • 鈴木 裕, 中里 徹矢, 横山 政明, 阿部 展次, 正木 忠彦, 森 俊幸, 杉山 政則, 土岐 真朗, 高橋 信一
    2012 年 27 巻 2 号 p. 102-105
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    急性膵炎の重症化と合併症発生に対する肥満の影響について概説した.肥満の影響を考えるに当たり,多くはBMI(Body mass index)を用いているが,近年はCTを用いて内臓脂肪や皮下脂肪をパラメーターとしている報告も散見される.各報告をみると重症化や合併症発生に肥満は何らかの影響があると予想される.BMIでは,欧米では多くの肥満例が重症化と全身合併症に相関し,全身合併症の多くは呼吸不全である.本邦ではBMIは有意な重症化の危険因子とはならず人種差の可能性はある.しかし,日本人でも内臓脂肪の増加は急性膵炎重症化や合併症の発生に影響する可能性があり,肥満のタイプが重要であると思われる.今後は内臓脂肪面積などを画像診断による肥満のタイプをパラメーターとして詳細な検討を行う必要があると思われた.その際は,可能な限り発症早期の画像を用いるべきであり,理想は膵炎発症直前の測定が望まれる.
  • 正宗 淳, 粂 潔, 下瀬川 徹
    2012 年 27 巻 2 号 p. 106-112
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    全国の日本消化器病学会認定・関連施設1295施設に対して,受療した急性膵炎および慢性膵炎患者に関するアンケート調査を行った.詳細な飲酒歴の記載されていたアルコール性急性膵炎患者316人(男性268人,女性48人),アルコール性慢性膵炎患者528人(男性481人,女性47人)について飲酒習慣を検討した.女性の膵炎患者の診断時平均年齢は急性膵炎43.0歳,慢性膵炎47.7歳と,男性の急性膵炎50.5歳,慢性膵炎56.8歳に比べて若かった.1日あたりの平均飲酒量は男女間で差を認めなかったが,女性は男性に比べ短い飲酒期間で膵炎を発症していた.累積飲酒量も女性が男性に比べて少なかった.膵炎加療後平均2年間に膵炎が再発するリスクは,断酒した場合に比べ,飲酒量を減らして継続した場合は2.7倍,飲酒量が不変・増加の場合は6.2倍であった.膵炎加療後の断酒指導が特に重要と考えられた.
  • 中村 太一, 伊藤 鉄英, 丸山 勝也, 下瀬川 徹
    2012 年 27 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎は非可逆性進行性の線維化疾患であり,腹痛による日常生活の質の低下,膵外分泌機能不全による栄養不良,膵内分泌機能不全による膵性糖尿病をきたし,また膵癌の発生も高率であることから,その生命予後は健常者に比し短い.慢性膵炎の病態には飲酒,喫煙,食事などの生活習慣因子が強い影響を与えるが,これらの因子が慢性膵炎診療において意識されることは少なく,その根本的な原因として成因分類の問題があると考えられる.また,断酒・生活指導には科学的根拠が少ない指導方法も存在する.そのため,成因と病態・予後との関連や,治療としての断酒・生活指導の有効性が検証できていない.成因分類を現在の状況において修正,検証し,実際の指導方法をその有効性の観点から,比較,吟味することが,これらの五里霧中な状況に光明をもたらすと考えられる.今回,慢性膵炎の断酒生活指導指針における問題点および,今後の対策について明らかにした.
  • 山本 明子, 濱田 広幸, 石黒 洋
    2012 年 27 巻 2 号 p. 121-131
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎は,膵腺房細胞の脱落壊死と小葉間の線維化を主体とする進行性の炎症性疾患であり,慢性膵炎の原因として最多のものがアルコールの多飲である.アルコールによる膵障害に関する細胞レベルの研究は従来から単離膵腺房細胞を用いて高濃度のエタノールに対する作用が検討されてきた.しかし,飲酒後の血中エタノール濃度は通常30mM以下であり(約20mMで酩酊.1 pintのビールの飲酒では,アルコールの血中濃度は5mM程度),飲酒が膵障害を起こすメカニズムとは言えない.著者らは,膵導管細胞を用いて,通常の飲酒後の血中濃度であるエタノール1mMでも膵導管細胞からの水の過分泌を認めること,および,その細胞生理学的メカニズムについてもn-アルコールを用いて検討した.また,膵導管細胞におけるエタノールの水の過分泌が,なぜ,慢性膵炎と結び付くのか,他の研究を交えて述べる.
  • 堀野 敬, 高森 啓史, 馬場 秀夫
    2012 年 27 巻 2 号 p. 132-138
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    喫煙は膵癌発症の危険因子であるばかりではなく周術期合併症の危険因子でもある.しかしながら,膵癌手術の周術期に喫煙が及ぼす影響はほとんど報告されていない.膵癌手術症例96例を対象に喫煙の周術期に及ぼす影響をretrospectiveに解析した.本解析では,喫煙は手術部位感染(創部)の有意な危険因子であったが,循環器・脳血管・呼吸器術後合併症,入院期間および予後には影響を及ぼさなかった.この結果をもとに喫煙が膵癌手術周術期に与える影響を消化器外科領域における喫煙と周術期合併症の観点から概説した.
  • 佐藤 江里, 丹藤 雄介, 柳町 幸, 田中 光, 松橋 有紀, 松本 敦史, 柿崎 綾女, 近澤 真司, 今 昭人, 中村 光男
    2012 年 27 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    背景:糖尿病患者は年々増加しており,成人の5人に1人は糖尿病と言われている.糖尿病は膵癌のリスクファクターであるが,さらにその中から膵癌のハイリスク群を見分けることができれば,早期発見,治療につながると考えられる.目的:糖尿病患者における膵癌の予測因子を明らかにする.対象および方法:当科で経験した39例の糖尿病合併膵癌症例についてカルテ調査にて臨床的特徴を検討した.結果:糖尿病患者における膵癌予測因子として,喫煙と癌の家族歴があげられた.膵癌診断までの1年間で血糖コントロールは悪化し体重は減少していた.糖尿病の罹病期間が2年未満の症例および糖尿病と膵癌同時診断症例では,糖尿病の家族歴を認めず,膵性糖尿病であったと考えられた.結語:糖尿病患者における血糖悪化および体重減少,糖尿病家族歴のない新規発症糖尿病患者に対しては,膵癌を疑って迅速にスクリーニングするべきと考えられた.
  • 古川 正幸, 李 倫学, 植田 圭二郎, 舩越 顕博
    2012 年 27 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    2005年1月~2011年6月までに,当センターで組織学的に腺癌と診断された234例の膵癌症例の中で,診断の5年以上前から,2型糖尿病として治療歴のある25例について,それ以外の209例との間で,臨床像,検査所見,生存期間などをレトロスペクティブに比較検討した.
    2型糖尿病先行膵癌症例の概要は,次の通りであった.男性17例,女性8例,年齢の中央値が68歳(59~86),糖尿病の罹病期間は,10年[6~20.5](中央値[25%~75%]),膵癌診断時の空腹時血糖が155mg/dl [124~214](中央値[25%~75%]),HbA1cが8%[6.7~8.85](中央値[25%~75%]),糖尿病の治療としては,投薬なしが6例,経口血糖降下剤が13例,インスリンが6例であった.三大合併症として,網膜症3例,腎症2例が認められた.
    2型糖尿病先行膵癌症例は,膵癌発症の年齢が高く,心血管疾患の合併が多かった.また,膵癌診断時に,無症状の症例が56%も認められ,有意に高頻度であった.通常の膵癌では,診断時無症状例の方が,有症状例に比べ,Stage III以下の症例が多く,遠隔転移を伴う例が少なく,腫瘍最大径も小さく,根治切除率も有意に多かったが,2型糖尿病先行膵癌症例には,このような差は認められなかった.2型糖尿病から発症してくる膵癌では,その多くが,診断時に無症状であることが,大きな特徴であり,無症状であっても進行していることが多い.また,膵癌全体においては,Stage III以下の比較的長期予後が見込める症例の半分以上(56%)が,無症状の状態で診断されており,2型糖尿病のようなハイリスク群においては,定期的に画像検査や血液検査を行い,そのわずかな変化や異常を捉え,診断に結びつけることこそ重要なポイントであると考えられる.今回の研究は,あくまでも,がんセンターという特殊な1施設での,後ろ向き観察研究のデータであり,症例数も少ない.今後,多施設による大規模な観察研究や前向き研究が必要である.
  • 土岐 真朗, 古瀬 純司, 倉田 勇, 内田 康仁, 田部井 弘一, 畑 英行, 蓮江 智彦, 平野 和彦, 中村 健二, 鈴木 裕, 山口 ...
    2012 年 27 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    【目的】糖尿病患者における,膵癌の効率的なスクリーニング法の確立を目指し,糖尿病合併膵癌患者の臨床的背景をretrospectiveに検討した.【方法】膵癌(IPMCは除く)466例のうち発見時すでに糖尿病を合併していた68例を対象とした.糖尿病関連発見群:糖尿病の増悪を契機に発見された症例,糖尿病非関連発見群:糖尿病関連以外で発見された症例,の2群に分け,膵癌診断時の症状,HbA1c,各種腫瘍マーカー,外科的切除率について比較検討した.【結果】糖尿病関連発見群では32.4%,糖尿病非関連発見群では100%で有症状であった.各種腫瘍マーカーは両群で有意差はなかったがいずれも高値で,HbA1c(10.0±1.9% vs 8.6±2.1%,p=0.006),外科的切除率は糖尿病関連発見群で有意に高かった.【結論】糖尿病症例において,症状が軽度であってもHbA1c値が10%以上,腫瘍マーカーが高値の場合には各種画像検査を行うことで,より早期での膵癌の診断が可能となると考えられた.
  • 武田 洋平, 八島 一夫, 松本 和也, 河口 剛一郎, 原田 賢一, 村脇 義和
    2012 年 27 巻 2 号 p. 158-166
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    膵癌の診断は画像機器の進歩に伴い向上してきたが,なお発見時には進行しており切除不能であることが多い.早期発見には高危険群を設定し積極的にアプローチすることが重要である.今回我々は膵癌153症例を対象とし患者・臨床背景を詳細に解析し,危険因子を検討した.対照は便潜血陽性で大腸内視鏡検査を施行した症例のうち,性,年齢をマッチさせた153例とした.膵癌症例における男女間の比較では占拠部位として膵頭部が女性で高率であった.初診時主訴は背部痛と食思不振が進行例に多い傾向にあった.症例対照間の比較では,男性で他癌既往が有意に高率で(30.0%;P=0.030),糖尿病の頻度も高い傾向であった.他癌既往の内訳は胃癌,大腸癌など消化器癌が多かった.男性では消化器癌を中心とした他癌既往が新たな危険群の候補となる可能性が示唆された.女性では特徴的なリスクはなく今後の課題と考えられた.
委員会報告
  • 真口 宏介, 丹野 誠志, 水野 伸匡, 花田 敬士, 小林 剛, 羽鳥 隆, 貞苅 良彦, 山口 武人, 飛田 浩輔, 土井 隆一郎, 柳 ...
    2012 年 27 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    目的:結節を認めない分枝型IPMN症例の長期経過について検討する.方法:初回診断時にEUSで結節を認めない分枝型IPMN 349例を解析した.結果:観察期間は1~16.3年(中央値3.7年)であり,62例(17.8%)に病変の進展がみられた.うち22例に外科切除術を行い,病理学的には腺癌9例,腺腫13例であった.残りの287例(82.2%)には進展を認めず,症状等の理由で7例に切除術を行ったが,全例腺腫であった.また,分枝型IPMNと別病変として通常型膵癌の発生を7例(2.0%),新たな分枝型IPMNの出現が13例(3.7%)にみられた.全体では320例(91.7%)は経過観察継続中である.結論:EUSで結節を認めない分枝型IPMNの多くは経過観察可能である.しかしながら,経過観察に際し,病変の進展と通常型膵癌の発生に留意する必要がある.
原著
  • 原田 亮, 真口 宏介, 高橋 邦幸, 潟沼 朗生, 小山内 学, 矢根 圭, 階子 俊平, 金子 真紀, 加藤 隆佑, 加藤 新, 安保 ...
    2012 年 27 巻 2 号 p. 175-184
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    1997年4月から2010年12月までに当センターで経験した浸潤性膵管癌切除例167例のうち内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor;NET)と膵管癌(ductal cell carcinoma;DC)の合併2例,併存1例を対象として,NET,DCの占拠部位と腫瘍径,切除標本肉眼所見と病理学的所見,臨床像,画像所見について検討を行った.症例1,2はNETとDCが離れて存在し(合併),症例3はひとつの病変内に混在していた(併存).症例1,2のNETはともにNeuroendocrine tumor G1であり,DCはともにpStage IVaであった.症例3は腫瘍全体の15%でNET成分を認め,pStage IIIであった.症例1,2ではともにNETが頭側に存在し,NETの悪性度は低かった.ひとつの病変のみにとらわれず,合併例の存在を念頭に置き精査を行うことが重要である.
  • 栗原 竜也, 伊東 那々子, 向後 麻里, 清水 俊一, 嶋田 顕, 小西 一男, 米山 啓一郎, 井廻 道夫, 木内 祐二
    2012 年 27 巻 2 号 p. 185-193
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    [目的]切除不能進行膵がんにおける標準治療の塩酸ゲムシタビン(GEM)療法に対する,テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合カプセル(S-1)療法の薬剤経済学的優位性を検討することを目的に,費用効用分析を行った.
    [方法]進行膵がんの臨床経過を示す判断分析モデルを作成した.文献調査により,判断樹の各確率点における移行確率と生存効果を算出した.費用は,切除不能進行膵がん患者の診療録および診療報酬明細書の調査により算出した.効用値は,モデルシナリオのQOLを医師がEuroQol 5-Dimension(EQ-5D)で評価し算出した.得られたパラメータを用い費用効用分析を行った.
    分析視点は保険者とし,各治療法の費用効用比および増分費用効用比を算出した.モデルの頑健性はトルネードダイアグラムで評価した.
    [結果]期待費用はGEM療法で1,636,393円,S-1療法で985,042円,期待獲得質調整生存月(QALM)はGEM療法で3.79 QALM,S-1療法で7.18 QALMであった.費用効用比はGEM療法で431,766円/QALM,S-1療法で137,192円/QALMであり,増分費用効用比は-202,913円/QALMであった.一元感度分析においても結果が逆転することはなく,モデルの頑健性が示された.
    [考察]S-1療法は,GEM療法に比べ少ない費用でより多くのQALMを獲得できる,より費用対効用に優れた治療であると考えられた.
症例報告
  • 吉田 康彦, 黒田 暢一, 裵 正寛, 矢田 章人, 藤元 治朗
    2012 年 27 巻 2 号 p. 194-198
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性.他院で胆石症に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行された.術前のMRIで偶然,膵体部に18mmの腫瘤を認めた.膵体部腫瘤の精査,加療目的に入院となった.造影CTでは周囲より緩徐に造影される22mmの腫瘤として描出され,超音波内視鏡では不整形で内部に不均一な高エコー領域を伴う腫瘤として描出された.PET検査で集積を認めないものの膵癌が否定できず,膵体尾部切除を施行した.病理診断にて黄色肉芽腫性炎症性腫瘤と診断された.膵の黄色肉芽腫性腫瘤は非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 吉田 雅博, 鵜梶 実, 税所 宏光
    2012 年 27 巻 2 号 p. 199-205
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性.糖尿病性慢性腎不全により,2008年7月に透析を導入し,近医にて維持透析(2回/週:火,土)を受けていた.定期腹部超音波にて膵尾部癌+多発性肝転移の診断を受けた.2009年4月に当院紹介入院,血液透析併施ゲムシタビン単独療法施行を開始した.月曜午後にゲムシタビン(1000mg/m2×3投1休)投与し,火,土の透析計画とした.ゲムシタビン投与直後から有害事象がみられ,投与間隔の延長や休薬,投与量の変更を余儀なくされた.著しい貧血や血圧低下のためにシャント不全に対するPTAや輸血の対応が必要となった.治療開始後1.5ヵ月のCTにてStable Disease(SD)の判定,CA19-9の低下を認め,外来通院にて治療継続となった.その後本人および家族との協力の下で治療継続し,2010年6月に永眠された.文献的考察を含め報告する.
  • 和田 秀之, 沼田 昭彦, 福永 亮朗, 笹村 裕二, 武山 聡, 子野日 政昭
    2012 年 27 巻 2 号 p. 206-211
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は78歳の男性で,膵頭体移行部の主膵管型膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)に対し,膵頭十二指腸切除術を施行した.術後8か月目の血液検査で貧血の進行,腫瘍マーカーの上昇を認め,上部消化管内視鏡検査を行ったところ,膵胃吻合部に腫瘤を認め,同部より出血を認めた.内視鏡的に止血困難で,また再発の可能性も考えられたため,胃部分切除術,残膵全摘術,脾摘術を施行した.病理組織学的検査にてIPMCと診断され,局所再発,あるいは異時性多発病変であることが示唆された.膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は,過形成や腺腫などの良性腫瘍から,非浸潤性腺癌,浸潤性腺癌までの多様な組織型を含む粘液産生性の腫瘍である.腺癌でも通常型の膵管癌と比較すると予後は比較的良好であるが,局所再発や多中心性発生による残膵再発,通常型膵癌の合併,他臓器癌の合併が多く報告されており,慎重な経過観察が必要である.
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