抄録
症例は66歳男性.左側腹部痛と腹部膨満感を主訴に紹介受診.腹部造影CTにて,網嚢内に脂肪織濃度の上昇を伴う2.0cm大と8.5cm大の嚢胞性腫瘤を認め,急性膵炎,膵仮性嚢胞の診断で入院.主膵管は体尾部で拡張,頭部で先細り状に狭窄,狭窄部に6mm大の腫瘤が疑われた.ERPにて膵頭部で主膵管の狭窄像を認め,膵液細胞診は疑陽性であった.FDG-PETにて膵頭部に軽度集積される小結節を認めた.以上より,膵頭部癌(Stage I)により急性膵炎を発症し膵仮性嚢胞を形成したと診断,経皮的嚢胞ドレナージ施行後に手術を施行した.脾静脈合流部対側の門脈に浸潤を認めたため,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,門脈合併切除術を施行した.膵仮性嚢胞の原因として,稀ではあるが膵癌の存在を念頭に置く必要があると考えられた.