膵臓
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特集 膵疾患の分子病態
抗がん剤により膵癌細胞に誘導されるEMT促進因子の同定と機能解析
島崎 猛夫山本 聡子石垣 靖人高田 尊信有沢 富康元雄 良治友杉 直久源 利成
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2016 年 31 巻 1 号 p. 76-84

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抄録
膵癌難治性の根底には腫瘍細胞の高い増殖能,強度の浸潤性,抗がん剤・放射線耐性と高転移性がある.このようながん細胞の生物学的特性にはepithelial mesenchymal transition(EMT)が関連していることが知られている.我々は膵癌細胞にゲムシタビン(GEM)を作用させるとEMT様の形態,機能変化が誘導されることを見出した.本研究では,GEMが癌細胞にEMT様変化を誘導する分子機構を検討することを目的として,膵癌細胞の培地のプロテオーム解析を行った.GEM投与により,培地中の多数種の蛋白質が減少したのに対し,熱ショック蛋白質90(HSP90)は増加した.HSP90の組み換え蛋白質を膵癌細胞に添加したところ,EMT様の形態変化とvimentin発現を誘導し,細胞遊走能は亢進した.以上の結果より,GEMが膵癌細胞からHSP90の分泌を誘導することでEMT様変化を来す可能性が考えられ,ひいてはがん治療戦略として,抗がん剤に対する細胞反応を考慮した治療方策が必要であることを示唆している.
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© 2016 日本膵臓学会
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