2017 年 32 巻 4 号 p. 767-774
症例は52歳女性.糖尿病の既往あり.急激な腹痛を主訴に前医受診し,画像検査で膵嚢胞破裂が疑われ当院に紹介された.CTで膵体尾部に径10cmの嚢胞性病変と,周囲に血性を示唆する腹水を認めた.前医MRIで嚢胞はCyst in cyst様であり膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)の破裂が疑われた.超音波内視鏡検査では膵体尾部に多量の凝血塊を内部に含む多房性嚢胞を認め,出血性膵嚢胞性腫瘍と診断された.保存的に止血され,発症2か月後に膵体尾部切除術を施行した.組織学的に嚢胞壁は粘液胞体を有する低異型高円柱細胞から成り,卵巣様間質を認めMCN,intermediate-grade dysplasiaと診断された.嚢胞内容液は褐色で,嚢胞壁下には炎症性細胞とヘモジデリン貪食細胞を認め,陳旧性出血が示唆された.術後1年,再発なく経過している.MCNの自然破裂はまれであり,本邦報告例についての考察を加え報告する.