膵臓
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特集 膵疾患の病理学的診断の現状と課題
1型自己免疫性膵炎の病理:生検診断のための再評価
能登原 憲司
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2020 年 35 巻 4 号 p. 272-279

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抄録

1型自己免疫性膵炎(AIP)の生検診断においては,膵辺縁にみられる肥厚性病変と小葉病変の組織像を理解することが重要である.膵辺縁の肥厚性病変は脂肪組織の炎症と考えられる.花筵状線維化が好発するが全例で認められるわけではなく,単なる炎症細胞浸潤や線維化からなることもある.AIPでは小葉の輪郭が保たれるが,小葉内の腺房細胞は著減し,炎症細胞やacinar-ductal metaplasia(ADM)を含む組織で置換される.花筵状線維化を伴うこともあり,小葉は腫大しやすい.また一部に,萎縮し線維化した小葉も混在する.ADMと膵癌の鑑別は重要で,ADMの概念を認識しておく必要がある.閉塞性静脈炎,神経周囲炎,動脈周囲炎もAIPの特徴的な所見である.IgG4陽性形質細胞は多数(>10/高倍率視野)同定され,診断の際には病変内でのびまん性分布,IgG4/IgG陽性細胞比高値(>40%)も参考になる.

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© 2020 日本膵臓学会
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