2020 年 35 巻 4 号 p. 280-292
術前放射線化学療法(ネオアジュバント療法)は,膵癌の原発巣の縮小や遠隔転移巣の抑制によって,術後の予後を改善することが報告され,近年,ネオアジュバント療法の対象となる膵癌症例が増加している.ネオアジュバント療法後の膵切除検体の病理標本は,術前治療後の癌細胞の残存の程度や,癌細胞の状態(壊死や生存した癌細胞の割合),線維化等の病理組織学的な変化に関する正確な情報を有しているため,術前治療効果の評価や,術後の治療方針決定,術後の予後予測における有効活用に期待が集まっている.さらに,遺伝子,タンパク質レベルの分子病理学的研究への活用も進んでいる.しかし現状では,複数の病理組織学的な治療効果判定方法が使用されており,客観性,再現性,予後予測能において優れた方法が確立されていないことが大きな課題となっている.