2021 年 36 巻 1 号 p. 3-11
切除企図膵癌に対する標準治療は手術先行であったが,Prep-02/JSAP05試験により術前化学療法の優越性が示された.同試験の対象に相当する切除企図膵癌294例を対象に,手術先行に対する術前化学療法の有効性を単施設・後向き試験で検証した.術前化学療法は,75%がゲムシタビン+S1療法で,64%が2サイクル実施されていた.切除率は,やや進行した症例が多いにも拘らず術前化学療法群で有意に高かったが,手術時間・出血量・術後補助療法などの周術期因子には有意差はなかった.全体の治療企図解析で術前化学療法群の生存期間中央値は42.2ヶ月であり,手術先行群より約12ヶ月の生存期間延長を認めた.切除可能サブセットでも同様に術前化学療法群で有意な生存期間延長を認めた.今回の検討で,ランダム化比較試験の結果が再検証され,今後術前化学療法は切除可能膵癌の標準治療として広く実施されることが期待される.