2021 年 36 巻 6 号 p. 360-365
症例は71歳,男性.上腹部痛を主訴に近医を受診し,急性膵炎を伴う膵動静脈奇形の診断で当院放射線科に紹介となった.CTで膵体部に拡張した血管の集簇を認め,門脈系血管が早期相で造影された.また膵尾部周囲には脂肪壊死と仮性嚢胞を認めた.血管造影では動静脈奇形の分布が広範囲であり,動脈塞栓術は困難と判断された.その後保存的治療が行われたが,食事再開に伴い膵炎を繰り返した.手術目的に当科紹介となり,尾側膵切除術を行った.膵炎による膵周囲の癒着や線維化が高度で,門脈や総肝動脈,脾動脈周囲には異常短絡吻合を多数認めた.病理組織学的検査では多数の毛細血管と線維化,大小の血管を認め,慢性膵炎と膵動静脈奇形の所見であった.術後は膵液瘻なく経過し,10日目に退院した.術後4年経過し,膵炎の再発は認めていない.内科的治療に抵抗性の急性膵炎を伴う膵動静脈奇形に対して,外科的治療は有効な治療法となりうると考えられた.