2023 年 38 巻 4 号 p. 286-294
症例は73歳,女性.肝機能障害と総胆管,肝内胆管拡張を認め,精査加療目的に紹介された.画像検査でGroove領域に漸増性に造影される腫瘤影と,内視鏡的逆行性胆管膵管造影での胆管ブラシ細胞診でClass Vを認めた.腫瘍マーカー高値でもありGroove膵癌と診断した.術前化学療法施行後に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行し,病理診断でGroove膵癌と確定診断した.今回,自験例を含む20例のGroove膵癌の国内報告例を集積し,術前診断法,病理学的特徴や予後を検討した.Groove膵癌は,病理学的に十二指腸浸潤を全例に来し,総胆管浸潤は55.6%に認めた.十二指腸粘膜生検,胆道系病理検査,超音波内視鏡検査は術前診断の一助となるが,画像・内視鏡検査所見に応じ,複数の診断法を考慮する必要がある.また,予後としては通常型膵管癌と同様に集学的治療の効果が得られる可能性が示唆された.