膵臓
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38 巻, 4 号
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特集 膵疾患におけるInterventional endoscopyの進歩
  • 糸井 隆夫, 植木 敏晴
    2023 年 38 巻 4 号 p. 181
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
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  • ―ERCP,EUSを含めて―
    糸永 昌弘, 北野 雅之
    2023 年 38 巻 4 号 p. 182-191
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
    ジャーナル 認証あり

    膵癌による閉塞性黄疸の胆道ドレナージの第一選択は内視鏡的経乳頭的アプローチである.切除不能例では,self-expandable metalic stent(SEMS)が主に用いられる.SEMSにはuncovered SEMS(USEMS)とcovered SEMS(CSEMS)がある.また,最近,逆流防止弁つきステント(anti-reflex metal stent:ARMS)や大口径SEMSが市販され,その有用性が報告されている.切除可能例では,plastic stent(PS)が頻用されてきたが,近年術前化学療法が行われるようになり,切除可能例においても,胆道再閉塞期間が長いSEMSが頻用されるようになってきている.さらに,経乳頭的アプローチが困難・不能な症例に対して,超音波内視鏡下胆道ドレナージ術(endoscopic ultrasound guided biliary drainage:EUS-BD)が近年行われるようになり,良好な成績が報告されている.

  • 金 俊文, 濱 憲輝, 吉田 健太, 中村 里紗, 安藤 遼, 岩野 光佑, 豊永 啓翔, 石井 達也, 本谷 雅代, 林 毅, 高橋 邦幸 ...
    2023 年 38 巻 4 号 p. 192-200
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
    ジャーナル 認証あり

    内視鏡的膵管ドレナージは,経乳頭・吻合部的アプローチに加え近年では経消化管的アプローチも施行されている.経乳頭・吻合部的膵管ドレナージでは,十二指腸鏡やバルーン内視鏡を用いて膵管造影およびガイドワイヤー挿入を行った後にステントあるいはチューブを留置する.経乳頭・吻合部的膵管ドレナージは慢性膵炎など症候性の膵液流出障害で積極的に施行されており,ERCP後膵炎の高リスク群における予防効果も認められている.経消化管的膵管ドレナージは,経乳頭・吻合部的膵管ドレナージ困難例に対する代替法として施行されている.超音波内視鏡下に経胃的に膵管を穿刺してガイドワイヤーを留置し,穿刺部拡張の後にステント留置あるいはランデブー法による経乳頭・吻合部的膵管ドレナージを施行する.経消化管的膵管ドレナージは確立された手技ではなく,手技成功率や偶発症率を考慮すると,現時点ではEUS関連処置に習熟した内視鏡医のみが施行すべきである.

  • 安田 一朗, 圓谷 俊貴, 松野 潤, 林 伸彦, 岩田 圭介
    2023 年 38 巻 4 号 p. 201-208
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
    ジャーナル 認証あり

    膵石に対するESWLを併用した内視鏡治療は,その有効性,安全性,低侵襲性から,多くのガイドラインにおいて疼痛を有する症例に対する第一選択の治療法として位置づけられている.膵管内に浮遊する小結石であれば,内視鏡治療のみで治療できるが,多くの場合はESWLに膵管ステント留置や経鼻膵管ドレナージ,膵管口切開,内視鏡的結石除去といった内視鏡治療を適宜組み合わせた治療が行われている.ただし,内視鏡的に膵石を除去する手技の難度は高いため,胆膵内視鏡治療の十分な経験のある術者のもとで行われることが望ましく,長期予後においては手術治療が勝るため,ESWLや内視鏡治療が効果不十分な場合には手術を検討するべきである.

  • 島谷 昌明, 光山 俊行, 武尾 真宏, 堀谷 俊介, 松本 浩尚, 加納 真孝, 石崎 守彦, 北出 浩章, 高岡 亮, 岡崎 和一
    2023 年 38 巻 4 号 p. 209-216
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
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    術後再建腸管を有する胆膵疾患に対する内視鏡的処置は困難な症例が多かったが,balloon assisted enteroscopy(BAE)を用いることで内視鏡的処置が可能となり,現在盛んに施行されるようになってきた.特に胆道疾患に対するBAEを用いた内視鏡治療の有用性は多数報告されており,第一選択の治療法としてコンセンサスが得られてきた.しかし,膵疾患(特に膵管空腸吻合部狭窄)に対してBAEを用いた内視鏡治療は困難であるため,EUSを用いたインターベンションの報告が主になされている.しかしながら,最近ではdouble balloon enteroscopy(DBE)およびsingle balloon enteroscopy(SBE)を用いた新たな治療法の報告が散見される.

    今回,術後再建腸管症例における膵疾患,特に膵管空腸吻合部狭窄に対するDBEを用いた内視鏡治療について概説する.

  • ―膵液瘻,ネクロセクトミーも含めて―
    山宮 知, 入澤 篤志, 阿部 洋子, 永島 一憲, 水口 貴仁, 嘉島 賢, 久野木 康仁, 佐久間 文, 福士 耕
    2023 年 38 巻 4 号 p. 217-228
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
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    膵周囲液体貯留(PFC)は急性膵炎に伴う代表的な晩期合併症であり,治療の第一選択は保存的治療であるが,感染や消化管通過障害を併発した場合にはドレナージの適応となる.近年の機器や手技の進歩により,超音波内視鏡(EUS)下にPFCを穿刺しドレナージを行う方法が普及し,良好な治療成績が報告されている.しかし,壊死物質を多く含むwalled-off necrosis(WON)に対してはEUS下ドレナージ単独では治療に難渋することも多く,内視鏡的ネクロセクトミーを段階的に追加する,内視鏡的step-up approach法が主流となっている.現在,さらなる良好なドレナージ効果を目指し専用の金属ステントも開発され,この分野の技術的進歩は著しい.このような背景から治療困難であったPFCに対しても内視鏡治療のみで完治が望めるようになってきた.しかし,時に治療に伴い致命的な偶発症が起きる可能性があり,適応の判断と手技,起こりうる偶発症とその対処法を熟知することが重要である.

  • ―エタノール注入療法,ラジオ波焼灼療法―
    加藤 博也, 松本 和幸
    2023 年 38 巻 4 号 p. 229-237
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
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    膵神経内分泌腫瘍(PNEN)に対する最初のEUS下焼灼療法は,インスリノーマに対するエタノール注入療法であり,耐術能に乏しい患者の症状緩和目的に行われ,低血糖症状の改善を認めた.その後の症例報告でも有用性が報告され,15mm未満のものに対する症状緩和には有用な治療と考えられる.しかし,非機能性PNENにおける画像上の完全焼灼率は80%に届かない報告が多く,満足のいくものではない.ラジオ波焼灼療法は,エタノール注入療法よりも完全焼灼率が高いものの重篤な合併症が懸念される.EUS下焼灼療法が適応となる腫瘍サイズとして,リンパ節転移のリスクを考慮すれば15mm未満が基準になると思われるが,10mm未満で低悪性度のPNENについては積極的治療そのものの要否が議論になっている.いずれのサイズのPNENに対して,エタノール注入療法,ラジオ波焼灼療法,いずれの治療がよいか,さらなる検討が必要である.

  • ―エタノール,RFAなどレビュー―
    丸尾 達, 植木 敏晴, 伊原 諒, 後野 徹宏, 田中 利幸, 平塚 裕晃, 永山 林太郎, 立川 勝子
    2023 年 38 巻 4 号 p. 238-246
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
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    膵腫瘍性嚢胞に対するEUSガイド下焼灼療法(EUS-guided ablation:EUS-Ab)は,手術ができない,または手術を拒否した患者で,相応の余命が期待でき,径2cm以上かつ増大傾向,もしくは,径3~6cm程度までの腫瘍性嚢胞がよい適応である.EUS-Abは,EUS-FNA(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration:EUS-FNA)の手技を用いて,エタノールや抗癌剤を嚢胞内に局所注入する局注療法と,熱エネルギーで物理的に腫瘍細胞を死滅させる特殊器具を用いた高周波焼灼療法がある.嚢胞腔消失率は,一定の効果が期待できると考えられているが,長期成績は不明である.EUSガイド下治療は,大きな可能性を秘めた手技と思われ,今後,本邦におけるこれらの手技の発展と普及を望むところである.

  • ―RFA,局注療法,放射線マーカーも含めて―
    良沢 昭銘, 水出 雅文, 谷坂 優樹, 藤田 曜
    2023 年 38 巻 4 号 p. 247-252
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
    ジャーナル 認証あり

    EUS下抗腫瘍治療は,①腫瘍焼灼治療と,②腫瘍内局注治療の2つに大別される.このうち腫瘍焼灼治療は,エタノール焼灼,局所焼灼(RFA,PDT,冷凍凝固焼灼など),小線源埋め込みなどの物理化学的方法により腫瘍を破壊する方法である.一方,腫瘍内局注治療は,分子生物学的製剤を腫瘍に注入することで抗腫瘍効果をもたらすものである.これまでに抗癌剤,アデノウイルスベクター,DNAプラスミド,同種混合活性化リンパ球,樹状細胞,核酸医薬などを用いた試みが報告されている.膵癌に対するEUS下抗腫瘍治療は,今後のさらなる検討により有用な治療法となり得る可能性を秘めている.

  • 土井 晋平, 渡邊 彩子, 勝倉 暢洋, 辻川 尊之
    2023 年 38 巻 4 号 p. 253-260
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
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    超音波内視鏡下腹腔神経叢融解術(EUS-CPN)は,癌性疼痛に対する非薬物療法の一つであり,薬物療法で十分なコントロールが困難な場合に行われる補助的手段として位置付けられている.EUS-CPNの手技には,腹腔動脈起始部に穿刺と注入を行うCentral法,腹腔動脈の両側にアプローチするBilateral法,腹腔神経節に直接穿刺と注入を行うEUS-CGNの3つが主要なものとして報告されている.いずれも,これまでの臨床研究やメタアナリシスの結果から,安全性,疼痛緩和効果,オピオイドの減量効果,QOL向上が裏付けられている.一方,最適な手技の選択については見解がいまだ定まっていない.最近では,EUS-CPNを発展させた手技として,腹腔神経節に対するラジオ波焼灼療法や小線源療法が報告されている.これら新規手技はまだ少数の報告がなされているに過ぎず,今後さらに規模を拡げた研究を行う必要がある.

  • ― 十二指腸ステント留置術とEUS下胃空腸吻合術 ―
    土屋 貴愛, 祖父尼 淳, 田中 麗奈, 殿塚 亮祐, 向井 俊太郎, 永井 一正, 山本 健治郎, 松波 幸寿, 小嶋 啓之, 南 裕人, ...
    2023 年 38 巻 4 号 p. 261-270
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
    ジャーナル 認証あり

    悪性胃十二指腸閉塞(GOO)の内視鏡治療として,十二指腸ステント留置術が本邦では広く行われている.短期成績が良く,偶発症が少なく,経口摂取までの期間が短く速やかに化学療法が開始できるといった利点を有する.長期の生命予後が期待される場合は,外科的胃空腸吻合術を考慮する.一方,超音波内視鏡下胃空腸吻合術(EUS-GE)は,良悪性を問わずGOOに対する新しい低侵襲内視鏡治療法として注目されている.最近の報告では,十二指腸ステント留置術とEUS-GEは治療成績が変わらず,再治療率はEUS-GEが少ない.また,腹腔鏡下GEとEUS-GEの治療成績は変わらず,経口摂取までの期間や入院期間はEUS-GEの方が短く,偶発症も少ないといった報告もある.EUS-GEは将来GOOの標準的な治療アプローチになる可能性を秘めており,さらなる技術開発や保険適応のための臨床試験が期待される.

症例報告
  • ―囊胞性病変形成についての一考察―
    髙谷 昌宏, 服部 直, 山本 洋輔, 髙田 斎文, 国府島 健, 遠藤 芳克, 甲斐 恭平, 伏見 聡一郎, 和仁 洋治, 岡田 裕之
    2023 年 38 巻 4 号 p. 271-278
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
    ジャーナル 認証あり

    症例1は64歳女性.体重減少をきたし検査を受けた.膵尾部に直径42mmの囊胞性病変があり,造影CT動脈相で厚さ2mmの囊胞壁が濃染された.切除標本では腫瘍は線維性被膜を有する囊胞性腫瘍で内容物は漿液性の液体であった.被膜内面には神経内分泌腫瘍(NET)G1が裏打して増殖しており,いわゆるpurely cystic膵神経内分泌腫瘍(PNEN)であった.症例2は80歳男性.糖尿病悪化を契機に検査を受けた.膵尾部に微小囊胞があり,MRI拡散強調像で高信号,造影超音波内視鏡(EUS)で直径2mmの囊胞を有する厚さ1~2mmの濃染される壁構造が観察された.切除標本では直径5mmの腫瘍で線維性被膜の内面にNET G1が増殖しており,症例1と基本的に同一の組織構造を示した.症例2は微小病変のため造影EUSによる観察が診断上有用であり,purely cystic PNENの極めて初期の像である可能性がある.

  • 阿部 俊也, 仲田 興平, 重松 慶一, 中村 聡, 井手野 昇, 池永 直樹, 藤森 尚, 笠 普一朗, 島田 有貴, 小田 義直, 中村 ...
    2023 年 38 巻 4 号 p. 279-285
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
    ジャーナル 認証あり

    症例は48歳,女性,腹痛を主訴に近医を受診し,腹部超音波検査で膵頭部腫瘤を指摘され,精査加療目的に当院を紹介され受診した.造影CTで膵頭部に15mm大の遅延性に増強される充実性腫瘤を認め,MRIのT2強調画像で高信号を示し,EUSでは膵頭部に境界明瞭な15mm大の低エコー腫瘤を認め,画像上は神経内分泌腫瘍や充実性偽乳頭状腫瘍が鑑別診断に挙げられた.EUS-FNBによる生検で束状に増殖した紡錘形細胞を認め,免疫染色でS-100蛋白陽性であることから膵神経鞘腫と診断した.経過観察も検討されたが,核出術での摘出が可能,かつ,症状消失が期待されたため,切除を選択し,腹腔鏡下膵腫瘍核出術を施行した.術後合併症を認めず第12病日に退院となった.最終病理診断も膵神経鞘腫の診断であった.術後に腹痛は消失し,術後1年経過し,再発を認めていない.

  • ―自験例を含む国内報告例の検討―
    大豆生田 尚彦, 小泉 大, 宮原 悠三, 北林 宏之, 塩澤 幹雄, 近藤 悟, 兒玉 多曜
    2023 年 38 巻 4 号 p. 286-294
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/16
    ジャーナル 認証あり

    症例は73歳,女性.肝機能障害と総胆管,肝内胆管拡張を認め,精査加療目的に紹介された.画像検査でGroove領域に漸増性に造影される腫瘤影と,内視鏡的逆行性胆管膵管造影での胆管ブラシ細胞診でClass Vを認めた.腫瘍マーカー高値でもありGroove膵癌と診断した.術前化学療法施行後に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行し,病理診断でGroove膵癌と確定診断した.今回,自験例を含む20例のGroove膵癌の国内報告例を集積し,術前診断法,病理学的特徴や予後を検討した.Groove膵癌は,病理学的に十二指腸浸潤を全例に来し,総胆管浸潤は55.6%に認めた.十二指腸粘膜生検,胆道系病理検査,超音波内視鏡検査は術前診断の一助となるが,画像・内視鏡検査所見に応じ,複数の診断法を考慮する必要がある.また,予後としては通常型膵管癌と同様に集学的治療の効果が得られる可能性が示唆された.

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