2023 年 38 巻 6 号 p. 412-419
症例は38歳,男性.飲酒後の心窩部痛と嘔吐を主訴に当院に救急搬送され,アルコール性重症急性膵炎の診断にて入院となった.急性膵炎に対する全身集学的治療により救命し得たが,1ヶ月後のCT検査では膵尾部から後腹膜にかけて拡がる広範囲な膿瘍の出現を認めた.経胃瘻孔ステントを留置し,経胃内視鏡的ネクロセクトミーを行ったが膿瘍腔が大きく,頻回に内視鏡的ネクロセクトミーを施すも改善せず,外科的治療を導入した.ハイブリッド手術室で膿瘍腔をCTガイド下にマーキングしつつ膿瘍腔に直接腹腔鏡ポートを挿入し,経後腹膜アプローチによる腹腔鏡下ネクロセクトミー及びドレーン留置手術を施行した.膿瘍腔の縮小が得られ,術後78日目に自宅退院となった.重症急性膵炎後の巨大な膵被包化壊死に対して腹腔鏡下ネクロセクトミーが有用であったため,当科で施行した工夫と共に報告する.