膵臓
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38 巻, 6 号
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学会報告
特集 膵NENの診断・治療
  • 青木 琢, 大西 洋英
    2023 年 38 巻 6 号 p. 360
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり
  • 伊藤 鉄英, 高松 悠, 植田 圭二郎
    2023 年 38 巻 6 号 p. 361-366
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm:NEN)の診断および治療の標準化を目指して,日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS)より2015年に初めて膵・消化管NEN診療ガイドラインが発刊された.その後,WHO分類の改訂,ソマトスタチン受容体シンチグラフィーの登場,分子標的薬やストレプトゾシンおよびソマトスタチンアナログのランレオチドが対象疾患の追加,非機能性膵NENに対する手術適応の再検討など,多くのNENに関する新たな動向があり,2019年に第2版が改訂され発刊された.その後,ペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)も登場してきた.NENは希少腫瘍であるとともに,全身臓器に発生して多彩な臨床症状を呈する.NENの診断には最終的に病理分類が重要であり,病理診断に基づいた薬物治療戦略の選択が必要となる.本稿では,膵NEN診療の現状および今後の展望について総説する.

  • ―EUSを中心に―
    関根 匡成, 大西 洋英, 眞嶋 浩聡
    2023 年 38 巻 6 号 p. 367-374
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine neoplasm:pNEN)の画像診断に関しては,①腫瘍の検出,②鑑別診断,③staging,④治療効果判定,⑤再発評価が求められる.まずは①腫瘍が検出できなければ,②以降は評価できない.膵臓に関しては膵癌も含め,腫瘍の描出が難しい.pNENにおいても例外ではない.特にインスリノーマは通常1cm以下と小さいことが多く,検出に苦慮する.膵臓における小さな病変に関しては,超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography:EUS)が空間分解能に優れており,有用である.本稿ではEUSでの描出のコツも含め,各画像検査の画像所見について解説する.

  • 細野 眞
    2023 年 38 巻 6 号 p. 375-380
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    膵をはじめとする神経内分泌腫瘍(NEN)に対するソマトスタチン受容体イメージングとペプチド受容体放射性核種治療(PRRT)はNEN診療に欠かせない手法となっている.ソマトスタチンアナログを放射性核種で標識した放射性医薬品をイメージングと治療に用いることはセラノスティクスに即したものでもある.腫瘍親和性の高いソマトスタチンアナログを開発し目的にあった放射性核種を用いることが重要である.NEN診療の中でイメージングは治療方針決定に大きな役割を果たす.またPRRTは安全かつ有効な治療であり,わが国では原発臓器の制約なくNENの治療に用いることができる.現状ではセカンドライン以降に位置づけられるがファーストラインとしての使用や4回投与を超える追加治療も検討されていくであろう.

  • 大池 信之, 野呂 瀬朋子, 杉浦 善弥, 髙月 美里, 小泉 宏隆, 杉野 隆, 小池 淳樹
    2023 年 38 巻 6 号 p. 381-389
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    膵神経内分泌腫瘍(NEN)の分類の中で,神経内分泌腫瘍(NET G1~3)と神経内分泌癌(NEC)は同一線上のスペクトラムに位置づけられるようにみえてしまうが,両者の組織発生や分子生物学的振る舞いは大きく異なる.それは治療戦略にも影響するため,全く別の病態として認識し,適切な病理診断を行う必要がある.ただし,通常の診断法では鑑別困難な症例に遭遇する可能性もあり,病理学的および臨床的予後予測因子や治療関連因子の検討も加味しながら臨床医と討議できる関係の構築が望まれる.

  • 池田 公史, 今岡 大, 佐竹 智行, 渋木 太郎, 佐々木 満仁, 渡邊 一雄, 井上 佳苗, 平 知尚, 山口 将太, 福士 耕, 光永 ...
    2023 年 38 巻 6 号 p. 390-398
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    膵NENに対する薬物療法は,神経内分泌腫瘍(NET)と神経内分泌癌(NEC)で治療方針が異なる.また,膵NETに対しては,ホルモン症状コントロールと腫瘍制御で治療目的が異なる.ホルモン症状コントロール目的には,ソマトスタチンアナログが主に用いられ,腫瘍制御目的には,ソマトスタチンアナログや分子標的薬,細胞障害性抗癌剤が主に用いられる.これらの薬剤をどのように使い分けるかも重要であり,膵NETに対する治療選択MAPはその一助となる.また,放射性核種標識ペプチド治療も使用可能な状況であり,どのタイミングでこの治療を導入するかも重要な課題である.膵NECに対してはプラチナベースの化学療法が標準治療に位置づけられている.膵NENに対しては,様々な治療が使用可能な状況であり,これらの治療をうまく活用した集学的治療が求められている.

  • 河本 泉, 吉澤 淳, 稲本 道, 西山 和宏, 滝 吉郎
    2023 年 38 巻 6 号 p. 399-404
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    膵ランゲルハンス島を起源とする膵神経内分泌腫瘍(膵NEN)は高分化型のNETと低分化型のNECに分類される.また自律的過剰分泌されるインスリンやガストリンなどホルモンによる内分泌症状を伴う機能性腫瘍と,内分泌症状を伴わない非機能性腫瘍とに分類される.またMEN1など遺伝性疾患の部分症として発生する場合には同時性/異時性多発を特徴とする.これらの分類による特徴を理解したうえで適切な術式選択を行う必要がある.膵NENは基本的に悪性腫瘍であり,抗腫瘍薬や放射線治療など新しい治療法が出てきているが,切除可能であれば手術による切除が基本である.また,偶然診断された小さな非機能性膵NETの治療方針について,複数のガイドラインで手術先行ではなく経過観察が示されているが,悪性腫瘍であることを理解して慎重に行う必要がある.

症例報告
  • 吉田 俊彦, 毛利 康一, 曽山 弘敏, 山岸 農, 山根 秘我, 沢 秀博, 田中 基文, 梶本 和義, 柿木 啓太郎, 富永 正寛, 藤 ...
    2023 年 38 巻 6 号 p. 405-411
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    転移性膵腫瘍の切除例の報告は少なく,さらに骨肉腫を原発とするものは極めてまれである.我々は骨肉腫術後の異時性膵転移の1例を経験したので報告する.症例は55歳,男性.26年前に右下顎骨骨肉腫に対して原発巣切除が行われた.2年後,17年後に肺転移を認め,それぞれ切除,ラジオ波焼灼術,化学療法,放射線治療が行われ完全奏効が得られた.その後7年間は無再発で経過したが,定期検査で膵尾部に腫瘤影を認め当科紹介となった.CTで膵尾部に径53mmの淡く造影される腫瘤を認めた.超音波内視鏡では低~等エコーの分葉状の腫瘤であり,針生検で骨肉腫の転移と考えられた.PET-CTで同部位のみ異常集積を認め,単発の骨肉腫異時性膵転移と診断し膵体尾部切除術を行った.術後経過は良好で第10病日に退院した.骨肉腫の膵転移の報告は非常にまれであり,長期間無再発の後に膵転移再発していることとも含め示唆に富む症例と考えられた.

  • 大岩 立学, 倉橋 真太郎, 小松 俊一郎, 深見 保之, 齋藤 卓也, 佐野 力
    2023 年 38 巻 6 号 p. 412-419
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    症例は38歳,男性.飲酒後の心窩部痛と嘔吐を主訴に当院に救急搬送され,アルコール性重症急性膵炎の診断にて入院となった.急性膵炎に対する全身集学的治療により救命し得たが,1ヶ月後のCT検査では膵尾部から後腹膜にかけて拡がる広範囲な膿瘍の出現を認めた.経胃瘻孔ステントを留置し,経胃内視鏡的ネクロセクトミーを行ったが膿瘍腔が大きく,頻回に内視鏡的ネクロセクトミーを施すも改善せず,外科的治療を導入した.ハイブリッド手術室で膿瘍腔をCTガイド下にマーキングしつつ膿瘍腔に直接腹腔鏡ポートを挿入し,経後腹膜アプローチによる腹腔鏡下ネクロセクトミー及びドレーン留置手術を施行した.膿瘍腔の縮小が得られ,術後78日目に自宅退院となった.重症急性膵炎後の巨大な膵被包化壊死に対して腹腔鏡下ネクロセクトミーが有用であったため,当科で施行した工夫と共に報告する.

  • 中島 隆善, 藤川 正隆, 坂井 良行, 南堂 吉紀, 松木 豪志, 一瀬 規子, 笠井 明大, 岡本 亮, 生田 真一, 仲本 嘉彦, 相 ...
    2023 年 38 巻 6 号 p. 420-427
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    症例は89歳,男性.85歳時に膵頭部癌の診断で膵頭十二指腸切除術および門脈合併切除を施行し,病理組織学的に中分化型管状腺癌と診断された.患者の希望もあり補助化学療法は行わず外来通院中であった.手術より3年10か月無再発で経過していたが,心窩部痛を自覚したため当院を受診した.血液検査にて炎症反応の上昇,CT検査で残膵に連続する多房性の液貯留を認めた.膵管空腸吻合部に留置していたロストステントは膵管内に残存しており,その閉塞に伴い発生した膵膿瘍と診断した.膿瘍は胃後壁に密着しており超音波内視鏡下に経胃的ドレナージを施行した.ドレナージ後に炎症所見と症状は改善し,膿瘍腔は著明に縮小した.ロストステントは自然脱落し,以降は症状の再燃を認めていない.膵管ロストステントの閉塞に伴う膵膿瘍とそれに対する超音波内視鏡下経消化管的ドレナージ術による治療の報告はなく,文献的考察を加えて報告する.

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