膵癌は高齢者ほど罹患しやすい疾患であるため,超高齢社会を迎えた本邦では増加傾向にある.高齢者では,腫瘍学的に切除可能な膵癌であっても,外科的切除の適応外となることがある.一方で,腹腔鏡下膵体尾部切除術など,治療の低侵襲化も進んできた.放射線治療はその安全性から,高齢であっても適応になりうる.多方向から照射することで正常組織への線量を低減しつつ腫瘍への線量を上げる技術や,陽子線や重粒子線治療も期待される.薬物療法はゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法,ゲムシタビン単剤,S-1単剤が選択肢である.いずれの治療モダリティも,年齢のみならず,主要臓器機能や併存症などを含めた包括的な評価を基に適応を判断することが望まれる.