2024 年 39 巻 1 号 p. 58-62
日本は世界に先駆けて2007年に超高齢社会に突入し,医療制度や福祉政策の変革は喫緊の課題である.老年症候群や多数の慢性疾患を有する高齢者では,その病態は容易に重症化・複雑化しやすい.一般的に医療提供は1疾患に対し「治す医療」が中心であるが,高齢者では生活の質を重視した「治し支える医療」へのパラダイムシフトが求められる.また,「予防医療」に加えて,疾患や障害が発生する以前の段階から介入する「先制医療」の構築も必要であろう.そのためには,新規バイオマーカー,ゲノム,プロテオーム,メタボロームの解析情報,臨床情報などを集約した新しい予測因子や診断法の開発が待たれる.近年,加齢研究は飛躍的に進歩しているが膵臓学領域では十分とはいえず,今後,多方面からのアプローチにより新しい知見を重ね,膵疾患を有する高齢患者にエビデンスのある医療提供ができることを期待する.