2024 年 39 巻 1 号 p. 63-71
症例は73歳,女性.単純腹部CTで,膵尾部に増大傾向を有する18mm径の嚢胞性病変を指摘された.造影MRIおよび超音波内視鏡検査では,嚢胞内面は平滑で結節成分を指摘しえなかったが,隔壁構造と早期相から濃染される厚さ2mmの明瞭な被膜を認めた.小型で充実成分がないことより経過観察の方針となったが,その後も増大傾向が続き1年6か月後には30mm×35mm大となったため,膵粘液嚢胞性腫瘍(MCN)を疑って膵尾側切除術を施行した.術後病理検査では,ほとんどが単層粘液性上皮に被覆され,異型に乏しく,膵管との交通や卵巣様間質を認めなかったことから,simple mucinous cyst(SMC)と診断された.SMCはMCNとは異なる新しく提唱された粘液性膵嚢胞の概念で,その疾患特性は十分に解明されていないが,悪性リスクは低いと考えられており,MCNの鑑別疾患の一つとして認識する必要がある.