日本海水学会誌
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微細な気-液界面での局所過飽和の推定
─貧溶媒晶析における多形変化の利用─
松本 真和和田 善成鈴木 将土吉田 昌人尾上 薫
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2011 年 65 巻 5 号 p. 301-309

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抄録

微細気泡の導入により生じる気─液界面近傍での局所過飽和の生成を等温系での晶析操作における多形現象の変化より明らかにすることを目的とし,3つの多形(安定なγ型,準安定なα型,不安定なβ型)を持つグリシンの晶析をN2微細気泡供給下での貧溶媒法を用いて行った.溶液温度が303 Kにおいてグリシン飽和溶液に対し貧溶媒であるメタノールを体積割合(φMeOH)が10~60 vol%の範囲で混合した.飽和溶液とメタノールの混合と同時に,自吸式気泡発生器を用いて平均気泡径が10 μmのN2微細気泡を混合溶液に連続供給し,グリシンを晶析させた.比較として,攪拌機を用いた微細気泡非供給下でのグリシン晶析についても検討を行った.その結果,晶析初期(0.5 min)において,N2微細気泡非供給下ではφMeOHが60 vol%でβ型が選択的に得られるのに対し,微細気泡を供給するとβ型の生成領域が30から60 vol%の範囲に拡大すること,微細気泡の供給は晶析時間の増加に応じたβ型からα型への多形転移を抑制することが明らかとなった.さらに,φMeOHが異なる溶液でのβ型の溶解度(Csβ)およびグリシン初濃度(C0)を用いて濃度過飽和比(C0/Csβ)を算出した結果,β型の生成に必要なC0/Csβは,微細気泡非供給下において3.0であり,微細気泡の供給により1.7に低減するという知見を得た.

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© 2011 日本海水学会
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