日本海水学会誌
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65 巻, 5 号
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巻頭言
特集:「生活と水」
報文
  • 佐鳴湖を例にして
    谷 幸則, 森田 陽光, 坂田 昌弘, 大橋 典男, 槻木(加) 玲美, 後藤 敏一
    2011 年 65 巻 5 号 p. 264-271
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/15
    ジャーナル フリー
    静岡県浜松市の佐鳴湖から採取した堆積物コア中のリン,重金属(Cr,Zn,Pb,Cd,Co,Ni,Cu),光合成色素,珪藻殻を分析し,湖への人間活動の影響を評価した.コア中のリンと重金属の濃度は,コア上部で有意に高く,これらの人為的な負荷を意味している.その下部では,それらの濃度は低く,その値を人為的な影響がないバックグラウンド濃度として,湖全体の堆積物に残余している人為的な元素負荷総量を見積もった.植物プランクトン量を示す堆積物中の総クロロフィルa濃度,総カロテノイド濃度もコア上部で高く,また,同時にカロテノイド相対値に変化が見られたことから,植物プランクトン組成の変化を伴った富栄養化が生じたことを示唆する.珪藻殻と間隙水塩化物イオン濃度の分析によって,塩分が上昇してきたことが示唆され,おそらく新川放水路建設による海水遡上量の増大と集水域の都市化による淡水供給量の減少によると考えられた.堆積物コア中の複数の指標を分析することによって,佐鳴湖の水環境と生態系に与えてきた人為的な影響を示すことができた.
総説
  • 杉森 大助
    2011 年 65 巻 5 号 p. 272-279
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/15
    ジャーナル フリー
    Wastewater contaminated by edible oils (lipids) is discharged from restaurants and food-processing facilities. Lipids have a very high biological oxygen demand and notably pollute public bodies of water such as rivers, lakes and seas. In general, lipids in wastewater are removed using a grease trap, however they are not completely eliminated. Consequently, lipids comtaminate public water bodies and generate oil balls in bays. Microorganisms capable of breaking down lipids would be useful for solving the problem. Thus far, there are many reports on microbial degradation of lipids, however, many problems remains in terms of practical use. In this paper, we describe the development of lipid-degrading microorganisms and issues regarding their treatment techniques and the perspective of microbial wastewater treatment, as well as the author's work.
解説
報文
  • 中村 耕三, 宮本 潤哉, 中村 剛
    2011 年 65 巻 5 号 p. 289-293
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/15
    ジャーナル フリー
    世界的な水不足に対応するためRO膜による海水の淡水化技術の需要が高まっている.近年では,大型のRO法による海水淡水化プラントの建設が行われている.RO法によるプラントの問題のひとつとしてRO膜に供給する海水指標の精度の問題がある.これは,海水の水質によるRO膜の寿命に影響する問題で,本来RO膜の交換率を予測し造水コストを算出しているが,RO膜への供給海水の水質管理が悪く予測以上に交換率が上昇した場合,造水コストの上昇を引き起す.また,急激な水質の劣化によるプラント停止などプラントの運転において深刻な問題を引き起こす可能性がある.そこで本研究では,RO膜法による水質に関わる問題を抽出し,その問題の対策として現在の水質評価法を補完する指標の提案とその利用方法として連続監視によるプラント制御に関する提案と検討を行った.
総合論文
  • 谷岡 明彦
    2011 年 65 巻 5 号 p. 294-300
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/15
    ジャーナル フリー
    有機溶媒下のイオン交換膜や低含水率下のイオン交換膜におけるイオン輸送現象が,ドナン平衡及びネルンストプランクの式にFuossのイオンペア理論を導入することによって,理論的に解析され,実験的にも正しいことが明らかにされた.この結果膜中固定荷電基の有効性をあらわすパラメータ(Q値)やイオン移動度が誘電率の関数であることが明らかとなった.本理論は「高濃度塩濃縮」をはじめとして「メタノールを利用した燃料電池システム(DMFC)」,「低含水率下で駆動する燃料電池」,「有機溶媒が混合した廃水からの金属回収」,「イオンチャネルにおけるイオン透過」等を解析する上で基礎となるものである.
報文
  • ─貧溶媒晶析における多形変化の利用─
    松本 真和, 和田 善成, 鈴木 将土, 吉田 昌人, 尾上 薫
    2011 年 65 巻 5 号 p. 301-309
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/15
    ジャーナル フリー
    微細気泡の導入により生じる気─液界面近傍での局所過飽和の生成を等温系での晶析操作における多形現象の変化より明らかにすることを目的とし,3つの多形(安定なγ型,準安定なα型,不安定なβ型)を持つグリシンの晶析をN2微細気泡供給下での貧溶媒法を用いて行った.溶液温度が303 Kにおいてグリシン飽和溶液に対し貧溶媒であるメタノールを体積割合(φMeOH)が10~60 vol%の範囲で混合した.飽和溶液とメタノールの混合と同時に,自吸式気泡発生器を用いて平均気泡径が10 μmのN2微細気泡を混合溶液に連続供給し,グリシンを晶析させた.比較として,攪拌機を用いた微細気泡非供給下でのグリシン晶析についても検討を行った.その結果,晶析初期(0.5 min)において,N2微細気泡非供給下ではφMeOHが60 vol%でβ型が選択的に得られるのに対し,微細気泡を供給するとβ型の生成領域が30から60 vol%の範囲に拡大すること,微細気泡の供給は晶析時間の増加に応じたβ型からα型への多形転移を抑制することが明らかとなった.さらに,φMeOHが異なる溶液でのβ型の溶解度(Csβ)およびグリシン初濃度(C0)を用いて濃度過飽和比(C0/Csβ)を算出した結果,β型の生成に必要なC0/Csβは,微細気泡非供給下において3.0であり,微細気泡の供給により1.7に低減するという知見を得た.
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