2014 年 68 巻 2 号 p. 67-72
断熱材下の配管の腐食は,局所的に発生し,沿岸部に存在する設備において問題の一つである.塩化物イオンを含む雨水や海からのしぶきが保温材内に侵入した場合,保温材下は塩化物イオンの濃縮と高い湿度という腐食が促進される環境になる.保温材を外せば目視検査によって腐食を検出できる.しかし,保温材のはく離や再設置はとても時間と手間のかかる.それゆえ,保温材をはがすことなく腐食を評価できる方法が必要とされている.アコースティック・エミッション法は,配管に発生した腐食生成物(錆)の破壊によって放出される弾性波を検出できる.そこで本研究では,腐食体積を評価するためにAE法をMgCl2溶液を滴下した高湿環境における鉄鋼材料の腐食に適用した.AE活性は,MgCl2溶液を低下数日後から増加した後に低下した.その後,AE活性はMgCl2溶液を与えると再び高くなった.AE活性が高い期間は腐食部の厚さは大きく変化した.一方,腐食部厚さが変化しない期間ではAE活性はとても低かった.腐食体積とAE数には,腐食初期とそれに続く期間で異なる直線関係を示した.