日本海水学会誌
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微結晶の付着現象を伴う結晶成長機構に関する検討
正岡 功士三角 隆太仁志 和彦上ノ山 周
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2014 年 68 巻 4 号 p. 251-257

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抄録

結晶表面に母液中の懸濁微結晶が付着する現象を利用して見かけの結晶成長速度を向上させる現象について,微結晶の粒径が見かけの結晶成長速度に与える影響を検討した.過冷却度1~30 K,母液中の微結晶数2×104~7×105 kg-solution-1の条件において晶析装置を運転し,母液中に存在する微結晶の粒径分布を計測した.母液をろ別したフィルターの顕微鏡観察により,微結晶の粒径分布を計測した.その結果,ロジン-ラムラ分布で整理した場合の均等数およびメジアン径は,1.1~2.3,約3~6 μmであった.また,微結晶の結晶成長速度および核発生速度は低いこと,粒径は母液の過飽和度が高いほど大きいことが示された.一方,微結晶を含む過飽和溶液の上昇流中に結晶を浮遊させた場合における微結晶付着による結晶成長への影響として以下の3つの効果を仮定した.  (効果1)通常の成長単位と微結晶との体積差による成長単位増大効果  (効果2)付着した微結晶を起点とする結晶成長促進効果  (効果3)微結晶の発生・成長による過飽和度低下効果  同装置を用いて種晶を成長させた場合の結晶成長速度式へ計測された微結晶の代表粒径を適用し,見かけの結晶成長速度における効果1および効果3の寄与について推算した.その結果,効果1および効果3の寄与は極めて小さいことを明らかにした.また,既報から推算した微結晶付着を起点としたステップ形成による成長促進効果は,本検討の効果2として妥当な値であった.これらのことから,微結晶の付着による結晶成長速度促進の主要因は,効果2であることが示唆された.

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© 2014 日本海水学会
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