日本海水学会誌
Online ISSN : 2185-9213
Print ISSN : 0369-4550
ISSN-L : 0369-4550
報文
海水中でのイミノ二酢酸型キレート繊維の吸着等温式の決定と東電福島第一原発の閉鎖海域内汚染海水への組み紐状繊維の分割投入の提案
後藤 駿一河野 通尭片桐 瑞基藤原 邦夫須郷 高信河合(野間) 繁子梅野 太輔斎藤 恭一森本 泰臣菊池 孝浩
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 70 巻 2 号 p. 110-115

詳細
抄録
放射線グラフト重合法によって,エポキシ基を有するビニルモノマー(グリシジルメタクリレート)を市販の6-ナイロン繊維にグラフト重合した.その後,グラフト鎖中のエポキシ基の一部を,海水から放射性ストロンチウムを除去できるイミノ二酢酸基に転化し,イミノ二酢酸型キレート繊維(IDA繊維)を作製した.人工海水中で,3種類のアルカリ土類金属(ストロンチウム,カルシウム,およびマグネシウム)の繊維への吸着平衡関係は3成分系のLangmuir型吸着等温式で表わされることがわかった.閉鎖海域の海水へIDA繊維を,一度にではなく,分割して投入・浸漬するストロンチウム除去方法を本研究で提案した.この分割投入によって,同じストロンチウム除去率を得るのに必要な繊維の量を削減できることを回分実験から実証した.さらに,分割投入の回数に伴う3種類のアルカリ土類金属の平衡濃度の変化は,上記の3成分系のLangmuir型吸着等温式と物質収支式とから算出される計算値とよく一致した.
著者関連情報
© 2016 日本海水学会
前の記事 次の記事
feedback
Top