抄録
3週齢の雄のslc/ddyマウスに,ニコチンアミド(240 mg/kg体重/日)とストレプトゾトシン(70 mg/kg体重/日)を投与して2型糖尿病モデルマウスを作製した.市販飼料を与えて飼育した正常(対照)雄マウス,および,3週間市販飼料あるいは市販飼料に野生植物ミネラルを添加した餌(100 mg/kg体重/日)を与えて飼育した2組の2型糖尿病モデルマウスを対象に,体重,大腿二頭筋の2-デオキシ-D-グルコース(糖)取り込み速度,および,腹腔内への糖負荷に伴う血中グルコース濃度変化を調べた.また,筋細胞中のPI3キナーゼ,Aktキナーゼ,AMPキナーゼの活性を測定した.2型糖尿病モデルマウスは,正常マウスに対し,体重は軽く,大腿二頭筋の糖取り込み速度が低く,糖負荷に伴う血中グルコース濃度の回復過程も長かった.筋細胞のPI3キナーゼやAktキナーゼの活性も低かった.一方,植物ミネラルを投与した2型糖尿病モデルマウスでは,体重こそ市販餌料のみで飼育した2型糖尿病モデルマウスと差はなかったものの,大腿二頭筋の糖取り込み速度は上昇して正常マウスのレベルに保たれ,糖負荷後の血液中グルコース濃度の回復過程も正常マウスと同等レベルに改善した.筋細胞のPI3キナーゼやAktキナーゼ活性も正常マウスのレベルにあった.本結果は,2型糖尿病マウスへの植物ミネラル投与は,筋細胞のPI3キナーゼやAktキナーゼの活性を高めて,GLUT4のトランスロケーションを促進することで,細胞内への糖取り込み速度を高め,糖負荷に伴う血液中グルコース濃度の回復を促進したことを示唆する.